サーベイランスの精度評価は、2008年度の年報に記した理由により、突発性発しんと水痘の報告件数、さらに出生数を考慮しておこないたい。
　突発性発しんは、年次と季節による変動が小さく、モニターとして適切であることが立証されている。水痘は不顕性感染がなく、予防接種がなければ、年間発症者数は地域の出生児数に近似するとされる（季節性変動はある）。わが国では、ワクチン不全も考慮し、年間出生数の80〜85％程度が罹患すると推定される。定点のあり方に関する決まりはないが、定点当りの報告数が出生数と連動することを理想として考えるのが現実的であろう。

　島根県の2000年から2002年（A）の出生数の平均6,509人を１とすると、2006年〜2009年（B）は平均0.89（幅0.86〜0.92）であり、2010年は5,778人、0.89である。この間、2001年、2006年、2010年のように前年より微増した年もあるが、他は前年より73〜218名減少した。
　突発性発しんの、期間（A）の報告数の平均746件を１とした場合、これに対する期間（B）の各年の比率は平均1.15（1.08〜1.23）で、2010年は0.94であった。出生1万に対する期間（A）の報告数の平均は1,146件を１とすると、期間（B）の比率は平均1.28（1.19〜1.40）で、2010年は1.06であった。
　水痘の、期間（A）の報告数の平均は1,733件で、期間（B）の比率の年平均は1.05（0.91〜1.24）、2010年は1.10であった。出生1万に対する期間（A）の報告数の平均は2,663件で、期間（B）の比率の年平均は1.17（1.12〜1.35）、2010年は1.24であった。
　突発性発しん、水痘の両者で、報告実数、出生1万当りの件数とも、2000年頃と比べ、むしろ大きいか、少なくとも出生数の減少度より大きく保たれており、サーベイランスの精度は良好に保たれている。2000年頃には精度がやや低下していたと推測できる。

　出生数の期間（A）の平均は東部（隠岐を含む）2,549人、中部2,194人、西部1,766人であり、これらをそれぞれ１とすると、期間（B）の比率の平均はそれぞれ、0.92（0.89〜0.94）、0.91（0.87〜0.95）、0.86（0.81〜0.92）であり、2,010年はそれぞれ0.91、0.88、0.86であった。ここ数年、出生数の減少は西部でやや大きい。
　突発性発しんの報告実数は、期間（A）の平均は東部204件、中部273件、西部264件、期間（B）の期間（A）に対する比率の平均はそれぞれ、2.04（1.83〜2.25）、1.09（1.03〜1.19）、0.54（0.47〜0.64）、2010年の比率はそれぞれ、1.55、0.77、0.54であった。
　突発性発しんの出生1万当りの期間（A）の平均件数は、東部825件、中部1,245件、西部1,489件、期間（B）の期間（A）に対する比率の平均はそれぞれ、2.16（2.0〜2.35）、1.18（1.09〜1.31）、0.64（0.53〜0.76）、2010年の比率はそれぞれ、1.64、1.18、0.78であった。
　水痘の報告実数の期間（A）の平均は、東部423件、中部630件、西部692件、期間（B）の期間（A）に対する比率の平均はそれぞれ、2.11（1.79〜2.61）、0.85（0.59〜1.04）、0.58（0.45〜0.76）、2010年の比率はそれぞれ、1.81、1.02、0.74であった。
　水痘の出生1万当りの期間（A）の平均件数は、東部1,662件、中部2,870件、西部3,852件、期間（B）の期間（A）に対する比率の平均はそれぞれ、2.30（1.90〜2.87）、0.93（0.64〜1.09）、0.55（0.54〜0.86）、2010年の比率はそれぞれ、1.98、1.16、0.85であった。
　東部は2000年前後、明らかな精度の低下が認められたが、現在は回復し、精度は良好である。ただし、2010年は両疾患ともやや減少し、注意を要する。
　中部は、2008年2009年と水痘に関する低下が懸念されたが、2010年は回復した。替わって突発性発しんが減少し、注意を要するが、概ね精度は良好と言える。
　西部は両疾患の報告件数は、実数、出生1万人当りともに、出生数の低下以上に低下し、精度の低下が懸念されたが、2010年は両疾患とも出生児数の減少に見合う数値となり、改善された。しかし、浜田圏域の両疾患の定点当り報告件数は県内最少が続いており、一考を要する。
　また、下記の点の対応も必要と考えられる。
　１）近年の髄膜炎は中部のみの報告が続いている。
　２）マイコプラズマ感染症の報告件数は、過少と考えられる。
　３）基幹定点の把握疾患は3疾患とも浜田圏域からの報告が長らく皆無である。

	出生数	幼児人口	出生１万人当たり		幼児人口10万人当たり
年	県	（出生６年間合計）	突発性発しん	水痘	総報告数	報告数 （疾患除去） （※１）
1991	7510	49827	1628	3466	45000	21049
1992	7390	48166	1843	3314	57686	32151
1993	7081	46419	1652	3265	45443	21131
1994	7074	44970	1532	2631	34872	16542
1995	6599	43413	1582	3128	55460	19934
1996	7068	42722	1368	2521	39305	17623
1997	6828	42040	1240	3046	40716	13256
1998	6492	41142	1189	2431	39791	14119
1999	6827	40888	1153	2370	45532	14124
2000	6514	40328	1045	2940	47342	16381
2001	6590	40319	1237	2416	33024	14236
2002	6423	39674	1155	2634	35608	16217
2003	6220	39066	1238	2579	54743	15845
2004	6015	38589	1817	3117	49061	17844
2005	5915	37677	1625	3442	66000	19678
2006	6011	37174	1364	3588	72591	28568
2007	5938	36522	1482	3169	68696	23063
2008	5720	35819	1603	2762	60021	18183
2009	5615	35214	1430	2976	97893	15323
2010	5778	34977	1217	3304	63673	28699

※１　総報告数から、インフルエンザ及び感染性胃腸炎の報告件数を除いた件数

	出生数	幼児人口	出生１万人当たり		幼児人口10万人当たり
年	県	（出生６年間合計）	突発性発しん	水痘	総報告数	報告数 （疾患除去） （※１）
1991	2782	18270	1657	2876	39967	17017
1992	2762	17749	1756	3132	50228	24362
1993	2670	17179	1828	3700	42331	19786
1994	2668	16712	1477	2016	27184	14493
1995	2486	16166	1621	2808	47148	18211
1996	2639	16007	1209	2054	29562	14712
1997	2601	15826	1315	2876	32554	12410
1998	2530	15594	1281	2356	33333	11652
1999	2529	15453	1032	2017	33961	11519
2000	2543	15328	830	1738	36469	11378
2001	2631	15473	791	1429	20817	9022
2002	2474	15308	853	1819	24125	11327
2003	2483	15190	761	1990	40968	11712
2004	2342	15002	1998	2848	47707	17271
2005	2294	14767	1905	2942	67387	21873
2006	2311	14535	1731	4773	81355	34682
2007	2395	14299	1804	3165	82642	26114
2008	2365	14190	1941	3797	72156	20324
2009	2274	13981	1649	3527	111101	15764
2010	2331	13970	1356	3286	79878	35297

※１　総報告数から、インフルエンザ及び感染性胃腸炎の報告件数を除いた件数

	出生数	幼児人口	出生１万人当たり		幼児人口10万人当たり
年	県	（出生６年間合計）	突発性発しん	水痘	総報告数	報告数 （疾患除去） （※１）
1991	2856	18734	1716	3803	32171	19099
1992	2785	18180	2154	3289	57569	40402
1993	2660	17601	1767	3132	42924	24004
1994	2657	17074	1739	3150	35879	19128
1995	2480	16434	1819	3681	55610	20695
1996	2752	16190	1628	1948	36578	14521
1997	2554	15888	1269	3297	38652	17145
1998	2165	15268	984	2060	23376	12261
1999	2122	14730	1334	2135	32037	12661
2000	2221	14294	1094	2805	39170	13509
2001	2184	13998	1429	2935	31726	14402
2002	2177	13423	1213	2871	40572	19899
2003	2065	12934	1554	2562	57476	16770
2004	1983	12752	2022	3293	49592	18499
2005	2023	12653	1626	2650	60539	17158
2006	2084	12516	1358	3133	70438	29187
2007	1990	12322	1633	3060	68228	27406
2008	2030	12175	1424	1842	56394	20444
2009	1902	12012	1477	2655	93365	17974
2010	1921	11950	1093	3337	55071	25975

※１　総報告数から、インフルエンザ及び感染性胃腸炎の報告件数を除いた件数

	出生数	幼児人口	出生１万人当たり		幼児人口10万人当たり
年	県	（出生６年間合計）	突発性発しん	水痘	総報告数	報告数 （疾患除去） （※１）
1991	1872	12823	1453	3830	70912	29642
1992	1843	12237	1503	3625	68677	31192
1993	1751	11639	1211	2804	53845	20217
1994	1749	11184	1304	2779	44823	16425
1995	1633	10813	1164	2774	67659	22491
1996	1677	10525	1193	4198	58318	27563
1997	1673	10326	1082	2929	56401	11999
1998	1797	10280	1308	2983	73969	20623
1999	1743	10272	1394	3758	84210	20736
2000	1750	10273	1297	4834	76930	30614
2001	1775	10415	1662	3239	54277	22352
2002	1772	10510	1507	3482	47460	19305
2003	1672	10509	1555	3475	73546	21334
2004	1690	10402	1325	3284	52403	18612
2005	1598	10257	1220	3911	70742	19626
2006	1616	10123	848	2481	62669	19026
2007	1553	9901	792	3316	49136	13251
2008	1490	9619	1134	2067	45680	11852
2009	1439	9386	1022	2530	82293	10984
2010	1526	9222	1160	3290	49133	21676

※１　総報告数から、インフルエンザ及び感染性胃腸炎の報告件数を除いた件数