シマネスク55号
しまねの誇り「継承・先人からのメッセージ」世界遺産登録を目指す 石見銀山遺跡
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 その昔、東西貿易に影響を与え、シルバーラッシュをもたらした銀鉱山仙ノ山(せんのやま)も今は静かに眠っている。しかし、竹林と化した山腹に階段状に残る数多くの平坦地はかつて、鉱山開発によって作られた人工の地形である。ひとたび、調査を行えば往時の生産や消費活動の動かぬ証拠が出番を待ちわびたように顔をのぞかせる。小さなノミ音から始まった壮大な歴史と先人たちがたどってきた足跡を求め、守り、伝えようする現代人たちの活動の軌跡を紹介しよう。

石見銀山遺跡周辺図

 産業遺跡として国内初の世界遺産登録を目指す石見銀山遺跡は大田市(おおだし)・温泉津町(ゆのつまち)・仁摩町(にまちょう)に点在し、その総面積は約400ヘクタール。
 石見銀山遺跡は、銀の発掘が行われた「銀山柵内(さくのうち)」を中心に、銀の争奪に関わった矢筈(やはず)城・矢滝(やたき)城などの城跡、銀鉱石の積み出しや物資輸送に使われた鞆ケ浦(ともがうら)・沖泊(おきとまり)の港、銀鉱石を運んだ銀山街道からなり、またその周辺には、銀山に隣接する大森の町並み、銀山の外港として発達した温泉津の町並みがある。16世紀から20世紀初めにかけて、銀や銅の生産から搬出に至る産業システムの総体が自然環境とともに残っている。
 遺跡の価値や歴史的位置付けを明確化しようと綿密な調査研究、世界遺産登録に向けた整備、保全活動、保存管理計画策定などが行われている。

石見銀山遺跡の謎解明

本谷地区釜屋間歩付近で検出された岩盤加工遺構

 石見銀山遺跡の発掘調査が始まったのは昭和58年。大田市教育委員会によって代官所・番所・製錬施設・城跡などの調査が行われた。平成8年には島根県が中心となり石見銀山遺跡発掘調査委員会が設置され、大田市・温泉津町・仁摩町が協力して遺跡保存に取り組み始めた。遺跡発掘や古文書文献・石造物・間歩・街道などの調査研究が実施され、町並みでは平成13年度から本年12月の完成を目途に重要文化財熊谷家(※)住宅の保存修理事業も行われている。
 調査によって日々新たな発見が繰り返され、その量は膨大となっているが、発掘調査はいまだ遺跡全体の1%にも満たないという。今後の調査研究の動向が歴史を彩っていくのである。

昨今の調査研究から

本谷地区釜屋間歩付近の調査で発見された貴鉛(左)と灰吹銀(右)大田市教育委員会所蔵 石銀藤田地区で発見された建物跡。現在、埋められて遺構は土中に眠る 石見銀山から日本海に向かって作られた街道
石造には十字架らしき文様があることから、隠れキリシタンの墓との説もある

 平成8〜10年度の発掘調査の対象は仙ノ山の山頂近く、標高466メートル付近に位置する石銀藤田(せきがねふじた)地区。ここでは幅2メートルの道跡に沿って建物跡が並び、建物内やその周辺から間歩や炉跡、井戸跡など生活や銀精錬を含めた生産の跡が発見され、16世紀後半から18世紀にかけて山頂近くに町並みがあったということが判明した。
 発掘調査では、平成15年9月本谷(ほんだに)地区釜屋(かまや)間歩付近で見つかった高さ18メートルの巨大な岩盤遺構は斜面がひな壇状の三段に加工されていた。遺構は徳川家康に大量の銀を献上した鉱山師・安原伝兵衛(やすはらでんべえ)が開発した間歩一帯にあり、最盛期の姿を伝える貴重な採掘遺構とみられている。
 科学調査では鉄鍋炉(てつなべろ)や灰吹銀(はいふきぎん)、貴鉛(きえん)などの分析によって日本で初めて灰吹法を用いて大量に銀を取り出した過程が実証された。材質や技術の調査ばかりではなく、遺物・遺構の保存にも取り組んでいる。
 文献調査は県内を含む国内に加え、中国やポルトガル、オランダなどの海外でも実施され、石見銀山そのものの資料、国内での石見銀の流通、世界貿易における日本銀、国内の他の鉱山への技術伝播や人的交流などが明らかにされている。
 また、石造物調査は墓碑・石塔・石仏などの信仰関連、石臼・要石(かなめいし)などの生産関連、街道沿いの道標などの交通関連、石切場などの生産地を含む流通関連について調査を実施。人口の増減や、社会構造、人の動き、生活史など銀山の盛衰がひも解かれている。
 銀山から銀の鉱石や銀を運び出した街道の調査では、平成13年度から戦国時代に使われた鞆ケ浦道と温泉津沖泊道の調査を行い、銀鉱石・銀運搬ルートを確定。平成16年度は石見銀山街道鞆ヶ浦道の鞆ヶ浦(現在の仁摩町馬路の友)、同温泉津沖泊道の沖泊(現在の温泉津町沖泊)の集落調査を実施した。

※熊谷家=江戸時代に石見銀山附御料の町役人(年寄職)や代官所の御用商人(御用達)、掛屋を勤めた


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