美味お国自慢
食の護り人
第1回浜田ブランド「どんちっちアジ」
冬将軍が訪れ、島根の各酒造場では
日本酒の醸造作業が最盛期を迎えた。
良質な水、酒米、杜氏の技。酒造りに欠かせない
これら3つの要素を持ち合わせた
島根から新たな名酒が誕生した。
その名は「佐香錦」。
由来は遠き神代の頃にさかのぼる。
神棚画像
酒造場に飾られた神棚が酒造りを静かに見守る
神代の頃から続く、島根と酒との関係
 須佐之男命が八岐大蛇に酒を飲ませ、酔わせて退治をしたという伝説から始まり、島根は日本酒と切っても切れない関係にある。
 平田市の佐香神社(松尾神社)は酒造りの神といわれ、『出雲国風土記』では佐香に神々が集まって酒を造り、180日にわたり酒宴を催したという記述もある。佐香は酒の古名に該当することから、この地は日本酒発祥の地であるとも言われている。
 このように、古来より酒造りは島根の各地に根付き、その伝統は出雲杜氏や石見杜氏に受け継がれ、現在も日々技術と品質の向上が図られている。

仕込みの様子
酒母(しゅぼ)に麹、蒸し米、水を加えて醪(もろみ)を仕込む。この醪がやがて原酒となる
仕込みの様子
一定の温度まで冷ました蒸米の塊りを丁寧にほぐす
麹菌の繁殖
麹菌の繁殖に合わせた温度管理が入念に行われる
島根県統一ブランド酒「佐香錦」で知る、各蔵元ののこだわり
 平成15年、佐香神社に由来して命名された島根初の統一ブランド酒「佐香錦」が誕生した。これは、島根県が独自に開発した酒造好適米「佐香錦」を100%使用し、精米歩合60%以下(玄米の表層部の40%以上を削った白米)の部分で醸造した高級酒だ。純米吟醸酒・特別純米酒・純米酒のいずれかを県内37の酒造場が製造販売している。
 原料の酒米は「佐香錦」だけで統一するが、精米歩合以外醸造に関する取り決めはない。そのため、味、色、香りともに酒造場ごとの個性が生まれる。だから、「佐香錦」の特徴は一概にはいえないが、島根県酒造組合連合会によると酒造好適米「佐香錦」の特性からして「香味よく、きめの細かいまろやかさをもち、しかもきれいでハバのある、いわゆるコクのある酒」だとされる。
 統一ブランドではあるが、それぞれを飲み比べながら、味、香り、色の違いも楽しめる。ひいきの酒造場を見つけることもできるだろう。

麹菌をかける
蒸米にまんべんなくもやし(麹菌)を振りかける
「山田錦」に匹敵する酒造好適米「佐香錦」誕生
杜氏
味や色、香り、サエから酒の出来具合を確かめる杜氏
 「酒造好適米」とは水稲うるち米で酒造りに適した性質を持つ大粒種の米のことで、一般米が普通酒などに利用されるのに比べ、吟醸酒などの高級酒の原料米として使われる。酒米の生産地島根県は酒造りの際の酒造好適米の使用率が60%を超え、全国トップクラスを誇ることから高級酒へのこだわりの強さが分かる。しかし、高級酒用酒造好適米「山田錦」の栽培となると島根の気候風土は適さず、やむなく他県から購入してきたが、近年の高級酒の需要の伸びに比例して、「山田錦」のような県産の高級酒用酒造好適米誕生への要望が高まりをみせた。
 そこで、昭和60年から島根県農業試験場が人工交配を行い、平成7年から栽培適応性や醸造適性を検討。平成14年に新しい水稲奨励品種として指定された。「佐香錦」の名称は以前、県産最高級酒米の有力候補としていた応募名称を今回採用した。
 「佐香錦」はタンパク質含有量が低く、また米粒の中心部の心白(澱粉質が集まって白くなった部分)が小さいので高精白に耐えられるために純米吟醸酒等の高級酒を造るのに適する。また水に浸しても割れにくく、水分調整もしやすい。これまでのきき酒の総合評価は「山田錦」と比較しても遜色はなく、外観もきれいに仕上がる。まさに山田錦にも匹敵する酒造好適米なのだ。
 その扱いやすさから各酒造場の杜氏にも評価が高く、将来他県で使用されるようになれば、米と酒の相乗効果で「佐香錦」の認知度も高まるだろう。現在、酒造好適米「佐香錦」の生産は仁多郡、大原郡、飯石郡が主だが、中山間地帯に適する極早生酒造好適米として今後の生産意欲の高まりも期待されている。
 島根の酒の歴史に新たに刻まれた島根県統一ブランド酒「佐香錦」は、すでに、酒にこだわる人々を心地よく酔わせている。

しまね美味<うまみ>名鑑

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