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 しゃく の え
赤ノ江巻き
〜シンプルゆえにすたれない、懐かしい郷土料理〜
赤ノ江巻き  島前三島で北西に位置する西ノ島。この島の西部にある、戸数約110戸の赤ノ江地区には、地区の名前を冠した「赤ノ江巻き」という料理がその昔から伝えられている。
 島内の他の地区ではみることのできない独特のこの料理は、地元の人が「シャクネ巻き」と呼んでいるごく素朴な料理。作り方は、軽くあぶった岩海苔の上にまんべんなくご飯を敷き、しゃもじでペタペタとしょう油 を塗って、「スズ」と呼ばれる巻簀(まきす)で巻いただけのシンプルな海苔巻き。今でも、おかずを作る手間のないときや学校の遠足のお弁当用に作られていて、子供からお年寄りまでみんなが好物の食べ物だ。
 いつの時代からとはハッキリしていないが、「明治、大正の頃から作り始められていたんでしょう」と地元のお年寄りは話してくれる。一昔前は、岩海苔取りから始まって、しょう油も、お米も、「スズ」さえも、全てが自分の家で調達できる、とても安価な料理であり、ご馳走でもあった。忘新年会の酒席の後でつまんだり、仕事の弁当として頻繁に作られていたという。
 あぶった海苔と、熱いご飯に染み込んだしょう油の香りが食欲をそそる赤ノ江巻きを口にすると、お腹の底から懐かしい気持ちが込み上げてくる。料理法が簡単なだけに、ご飯に塗るしょう油の量で味が決まる。その分量は長年作ってきたお年寄りのカンどころでもあり、それぞれの家庭で微妙に異なるところも本当の意味での郷土料理の味わいだ。
 現在でも冬場に自分たちで採った岩海苔を冷凍庫で保存しておき、自作の「スズ」で巻く家庭も少なくない。もちろん市販されている岩海苔で作ることも可能だが、味はやはり自家製の岩海苔 の方が美味しいと、地区の人は口を揃えて教えてくれる。ただ、暖冬傾向の近年は岩海苔の生育も質もいまひとつのため、自家製の岩海苔を作る家庭も少なくなってきているという。
 島内の食堂には、「赤ノ江巻きを」とお願いすれば、特別に作ってくれるお店もある。西ノ島を訪れた際には、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。

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美味お国自慢
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