輝くハイテクノロジー
[安全で環境に優しい”生物農薬”]
農作物の害虫に農薬を使わず、天敵となる益虫を使って防除する「生物農薬」。
自然の力を利用した、生産者にも消費者にも、
そして環境にも優しいこの防除方法の実用化に今、
大きな期待が掛かっている。
写真
スジコナマダラメイガの卵に産卵中のアワノメイガタマゴバチ(体長約0.4ミリ、メイガの卵は直径約1ミリ)
写真
代換え餌の卵を顕微鏡のカメラで映し出す


がいちゅう
ムシのことは
てんてき
むしにまかせろ!

生産面での省力化と低コスト化、無農薬による安全性、環境保全など、多くのメリットをもたらす「生物農薬」。島根県農業試験場(出雲市、山田員人場長)では、早くからその必要性に着目し、全国に先駆けて天敵の研究に力を入れてきた。
特に、ガの卵に寄生する小さな寄生蜂「タマゴバチ」の大量増殖技術を開発し、邑智郡のスイートコーン畑(6ヘクタール)や八束郡の中海干拓地(40ヘクタール)で、国内ではほかに類をみない大規模なほ場試験を行い、成果を上げている。
天敵の利用範囲は野菜、果樹、花きと幅広い。なかでも、スイートコーンの出穂期に発生し食害を引き起こす「アワノメイガ」(以下害虫)の天敵、「アワノメイガタマゴバチ」(以下天敵、体長0.4ミリ)の試験は、平成6年の60アールから、8年には6ヘクタールにまで広がっている。
具体的には、人工飼育をしやすい代換え餌として増殖した「スジコナマダラメイガ」の卵に天敵を産卵・寄生させ、1センチ×2センチほどの厚紙にその卵を約百個張り付けて作った「卵カード」を、10株に1枚の割で直接作物の上に置く、といった方法で防除が行われている。
生産者が小さな力ードを置いていくだけの作業で、1枚の卵力ードからふ化した約百匹の天敵が数日で成虫になり、およそ半数の雌が害虫の卵に産卵。卵に寄生した天敵が害虫の卵から栄養分を摂取し、害虫の繁殖を止める仕組みだ。
全く駆除を行っていない場合の約半分の被害に抑える効果と、従来1株ずつ農薬を散布していた作業に比べ、非常にわずかな労力ですむことから、生産者には非常に好評である。
さらに、この方法を実験している邑智郡の生産者は、出荷の時に天敵利用をアピールしたシールをはり、市場や消費者に安全性をアピールして、ブランドイメージを高めている。
害虫の農薬に対する抵抗性も心配しなくてすむこの方法は、広いほ場でより天敵の密度が維持できるため、集団栽培などの大規模裁培にも効果を発揮する。
世界的な流れとなっている「環境保全型農業」にマッチした生物農薬は、新世代の害虫防除方法だ。ここまで確立された技術があれば、メー力ーが低コストでの製品化を行い、実用に向け広く普及する日は近いと期待されている。


23号目次へ