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インフルエンザの流行 2002/2003

 カゼ症候群の病原の約90%がウイルス性であり、その中でも毎年初冬から春にかけて流行するイン フルエンザウイルスが最も大きな位置を占めています。


発生状況
 例年、島根県では12月下旬から流行が始まり、1月中旬から2月上旬をピークに3月末には流行が 終わるのが普通です。
 今シーズンは早くから流行が始まり、2003年になってから急速に患者数が増加しました。 A香港型とB型ウイルスが患者から分離されていますが、2003年になってからの急速な流行拡大は A香港型によるもののようです。A香港型による流行は、1月下旬の第4週にピークとなりその後急速に患者数が 減少しましたが、入れ替わって小規模なB型の流行が2月から3月にかけて起こりました。 B型は、その後4月下旬まで散発的に報告されました。
 流行ウイルスがA型の場合は大きな流行を起こしやすく、またA型はさまざまな亜 型を持ち、しばしば抗原変異もみられます。 B型は散発あるいは地域的な流行を起こし、しばしばシーズン遅くまで流行します。現在ビクトリア系と山形系の2つのタイプが知られています。

病原体
 インフルエンザウイルスにはA型、B型およびC型の3つの型があります。
現在流行しているウイルスは、A型とB型で、A型にはウイルス表面のヘムアグルチニン(H)と ノイラミニダーゼ(N)の抗原性の違いにより、H1N1(通称Aソ連型)とH3N2(通称A香港型)があります。
 A型のヘムアグルチニン(H)は15種類、ノイラミニダーゼ(N)は9種類の型があり、それらが組み合わさって 新型のインフルエンザウイルスが生まれます。ほとんどの型は鳥やブタに感染するウイルスですが、 ごくまれに人間に感染性を持つウイルスが生まれる可能性があります。 この時は大きな流行になる恐れがあるため、新型インフルエンザの監視が行われています。

感染経路
 多くの場合患者の咳などで空気中に拡散されたウイルスを吸入して感染します。 また、患者の鼻汁、唾などに汚染された物品を介して感染することもあります。
 他人にうつす危険性が高いのは、発症してから3日間です。乾燥した分泌物などに含まれるウイルスは数時間感染性があります。

臨床症状
 典型的には1〜2日の潜伏期の後、突然の発熱で始まり、38℃を超える高熱となります。発熱は2〜4 日程度続き、その間に頭痛、咽頭痛、筋肉痛、関節痛、腰痛、全身倦怠感、悪感などを伴います。解熱して も咳、鼻汁が続き、健常人でも体調が回復するまでには1週間程度かかります。
 一般には死亡率は高くありませんが、高齢者や糖尿病、心臓疾患、呼吸器などに基礎疾患を持っている人の 感染、発症では重症化や肺炎による死亡がみられます。また、小児期に比較的多い合併症として中耳炎、副鼻腔炎、 肺炎、熱性痙攣、急性脳炎・脳症がみられます。

検査室診断
 咽頭拭い液や鼻腔拭い液を材料とした迅速検出診断キットにより、A型とB型のウイルス診断が可能になったため、 効果的な治療が行われるようになってきました。
最終的な型別のためには、咽頭拭い液、うがい液よりウイルス分離を行い同定します。 またペア血清(発病初期、回復期血清)による抗体測定によっても診断されます。

治療と予防
 従来の対象療法のほか、発症早期に抗インフルエンザ薬としてA型およびB型には ノイラミ二ダーゼ阻害剤(ザナビビル等)、A型にはアマンタジンの投与により、重症化の阻止が期待できます。
予防策としてうがい、手洗いの励行、室内湿度の保持、十分な睡眠、過労の防止などに注意しましょう。
ワクチン接種は感染防御および罹患した場合の重症化を防ぐのに効果があります。

感染症法での取扱い
 インフルエンザ定点把握の4類感染症で、患者数が定点から報告されています。 また、学級閉鎖等の情報も教育委員会から保健所を通じて報告があり、流行状況が把握されています。
保健環境科学研究所では定点医療機関より採取された検体からウイルス分離をおこない、 流行ウイルスの確認を行っています。