シマネスク58号
シマネスク58号・特集:オロチ神話のヒロイン「櫛名田比売」の面影を訪ねて シマネスク58号・特集:オロチ神話のヒロイン「櫛名田比売」の面影を訪ねて
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島根県の東部、出雲地方は神々の国、神話の国である。出雲神話の中でも、クシナダヒメをオロチから救った「ヤマタノオロチ神話」は壮大な物語として知られる。主役は荒ぶる神として知られるスサノオノミコト。しかし地上に降りてからは、機知に富んだ、優しく勇敢な神様ともいえる。東京赤坂の氷川神社など、縁結びや家庭和合の神様としてスサノオとクシナダヒメをあわせてまつる神社は少なくない。スサノオはヒメを櫛に変え、髪にさしてオロチとの闘いに挑んだというが、スサノオほどの男性に見初められたヒメとは、どんな女性なのだろう。その面影を探して、物語の舞台、奥出雲・雲南を訪ねた。
奥出雲マップ
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<神話に彩られ、悠々と流れる斐伊川>

水と森、心地いい清流の里・奥出雲

 オロチ神話の舞台となった斐伊川は、中国山地の山懐、奥出雲の船通山に源を発し、山間を曲がりくねり、いくつもの支流を合わせて宍道湖に注ぐ。オロチ神話の伝承はほぼ上流から下流に向けて、ストーリーが展開していく。
 まずは、クシナダヒメが住んでいたという上流へ。クシナダヒメの生地に姫を祭る神社があると聞き、訪れる。付近はサンショウウオや鳥など、さまざまな生き物が住む自然豊かな森。
 清流の音を心地よく聞きながら、森のにおいのする空気を胸いっぱいに吸い込む。社殿は女性的な美しいラインを持ちながらも堂々として力強く、奥出雲の山々と同じ喜びも悲しみもすべて受け入れる母のような優しさを感じた。


稲田神社

稲田神社は、参道の両側に並ぶ桜やツツジ、モミジなども手入れされ、祭りは地元有志によって毎年行われているという。土地の人は、2人の出会いがあったからこそ、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)が発見されたのだと、誇りを持っていた。

たたら火

斐伊川上流では山砂鉄がとれ、古来から“たたら製鉄”が行われてきた。昭和52年、「日刀保たたら」として“たたたら製鉄”が復活。日本で唯一日本刀の材料の玉鋼(たまはがね)を提供している。

奥出雲たたらと刀剣館

奥出雲たたらと刀剣館。

雲南市に伝わる海潮神楽
雲南市に伝わる海潮神楽

【ヤマタノオロチ神話】

奥出雲の斐伊川流域にすむ老夫婦に8人の娘がいた。毎年1人ずつオロチに食べられ、残るは末のクシナダヒメ1人。今年もオロチが来る時期になり、親子3人泣き暮らしていた。高天原から奥出雲に降りたスサノオは、川上から箸が流れて来たことから川沿いに上り、娘の家に着く。オロチは8つの頭と尾を持ち、体は8つの谷と峰に渡るほどの大きさ。そこで、スサノオは強い酒を造らせてオロチに飲ませ、酔って眠ったところで剣を抜いて切り裂く。尾からは天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)<三種の神器の一つ>が現れ、スサノオはそれをアマテラスに献上。クシナダヒメはめでたくスサノオと結ばれた。

クシナダヒメの面影を訪ねて クシナダヒメの面影を訪ねて
【鏡ケ池】奥出雲町佐白には、クシナダヒメが髪をとかす時に鏡にしたという池がある。 【クシナダヒメの屋敷跡】奥出雲佐白にクシナダヒメの両親、アシナヅチとテナヅチの屋敷跡がある。