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風物詩、よずくはで
 あるとき「はで」「はでば」を辞書で引いてみたら、なかった。方言と知る。共通語では「稲掛」「稲木」「稲架」などと呼ぶらしい。
 郷土色は形にもにじむ。出雲平野は、竹を七段、八段と横に渡した「平はで」。秋になると稲束をまとい、小学校への田んぼ道を縁どったものだ。風が吹けば風除けとなり、「ぴ〜ひゅる〜」と笛のような音色を奏でた。
 温泉津町湯里の西田地区では、いまでも「よずくはで」を築いている。四本の丸太を斜めに立てかけて組み、二本の横木で補強したもの。交差する丸太の先端部に、稲束をかけた姿が横向きのヨズク、つまりフクロウに似ているとの見立てで、ついた名という。 
 山が迫る谷あいの里の田んぼは、おおかたが階段状だ。そこが一面黄金色に染まったあと、ヨズクは舞い降り、たたずむ。吹きつける谷風にさえ、びくともせずに。
 もっとも、過疎が進むやら休耕田が増えるやらで、ヨズクの群れはめっきりと減った。子らがその陰に隠れ、かくれんぼしたという、童唄のような情景は、もう見られない。
 田んぼが謳う秋の詩か……。米はやっぱり、自然乾燥の「はで干し」がうまいと、スローフードの波はうねりだしているのだけれど。
文/ 伊藤 ユキ子
紀行作家。出雲市出身。RKB毎日放送アナウンサー、英国遊学を経て文筆活動に入る。主な著書は『紀行・アラン島のセーター』『台湾茶話』『古事記の原風景』など。『紀行・お茶の時間』では第7回JTB紀行文学大賞を受賞した。出雲に帰郷して以降、「田舎には都会にないものがいっぱいある」との視点で情報発信を試みている。
絵/ 小西 優子
イラストレーター。玉湯町出身。県内外のさまざまな広告媒体で活動中。平成12年、島根広告協会クリエイター賞受賞。現在松江市内のデザイン事務所に勤務。
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