しまね人。その底力 海を越え、紡ぎ続けた
魯迅との師弟愛。
増田わたる
ます だ わたる
明治36年〜昭和52年
 
魯迅から贈られた漢詩を持つ増田
  明治36年、魯迅文学の第一人者増田わたるは八束郡鹿島町に医師の長男として生まれました。旧制松江中学時代から中国文学に親しみ始め、東京帝国大学卒業後、佐藤春夫に師事して中国文学の研究、翻訳に従事しました。昭和6年、中国での遊学中に、当時国民党政府の目を逃れて上海に隠棲中だった文学者の魯迅に知遇を得ます。10ヵ月間にわたり、毎日3、4時間、魯迅から『中国小説史略』や小説『吶喊』『彷徨』についての講義を受けました。昭和7年、増田はやむなく帰国することとなりますが、別れを惜しんだ魯迅が漢詩を作り増田に贈っています。この漢詩は昭和53年に日中平和友好条約締結に来日した当時のとう小平副首相によって日中両国人民の友好を示す証として引用されました。
 帰国後、増田と魯迅との交流は文通によって続き、これらの書簡は現在、鹿島町立歴史民俗資料館で展示されています。昭和11年、魯迅没後、増田は改造社で企画された『大魯迅全集』の出版責任者となり、その後、大東亜省、外務省で中国文化関係の調査にあたりました。
 昭和23年に『魯迅の印象』を出版。島根大学、大阪市立大学、関西大学で教鞭をとって魯迅や中国文学を講じながら、『中国文学史研究』、『西学東漸と中国事情』、『雑書雑談』などの著作のほか、魯迅の著作などの翻訳を続けました。昭和52年、中国文学者竹内好の葬儀で弔辞朗読中に急逝しました。増田は膨大な蔵書家としても知られ、これらの蔵書は没後、関西大学図書館に収められています。また、書や篆刻に秀でた趣味人でもあり、鹿島町にも多くの書が残されています。
さらに詳しく知りたい方に
鹿島町立歴史民俗資料館
 増田わたるの故郷、鹿島町にある鹿島町立歴史民俗資料館には増田 の記念室が設けられ、魯迅から増田宛の書簡、漢詩等の資料と中国文学、中国に関する書籍が多数展示されています。その他、国史跡の佐太講武貝塚など町内出土の考古資料や佐太神社に伝わる美術品や民俗資料も収蔵されています。また、日本海に面する町らしく海からもたらされた様々な遺物、南西諸島産の貝の腕輪や朝鮮半島系の土器などをご覧になれます。

 
魯迅自らがサインを付けて増田宛に送ったポートレート

鹿島町立歴史民俗資料館●DATA
所在地/島根県八束郡鹿島町名分1355-4
電話/(0852)82-2797
入館料/大 人 310円
    高大生 205円
    小中生 105円
開館時間/午前9時〜午後5時
休館日/毎週月曜日
   [祝日、休日の場合はその翌日]
    年末年始[12月28日〜1月4日]

[URL]http://www.web-sanin.co.jp/local/kashima/siryokan/index.htm

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