私と島根 神話のふるさとで語る 日本には素敵な物語がたくさんありますが、その中でも日本神話は時代を越えて残したい大切な物語だと思います。そして、それを語り伝えていきたいと考えた私は、昨年10月から古事記を題材に「浅野温子語り舞台 日本神話への誘い」を始めました。
多くの方々の協力をいただきながら、伊勢神宮を皮切りに出雲大社(大社町)、太皷谷稲成神社(津和野町)、山口県の防府天満宮、赤崎神社を訪ねました。出雲大社では3話、太皷谷稲成神社では2話を語りました。時間にしてみれば1時間半から2時間余り。語りを聞くには決して短い時間ではありません。会場となった神社はどこもシーンと静まり返り、お客さんは前かがみになって私の語りに耳を傾けてくださいました。舞台を降りた時、「日本のお話っておもしろいね」と言っていただけたことが何よりも嬉しかったですね。
 奉納公演をさせていただいた出雲大社はとても大きく、歴史の重みや時間の流れを感じさせるお社です。だからといって威圧感は全くなく、温かなものが伝わってきました。私はその温かさに優しく包まれながら舞台に立ち、風や空気、そこにあるすべてのものを感じながら語っていました。すると、山間から「ケーン、ケーン」と鹿の鳴き声が聞こえてきたのです。「ああ、私は自然や動物、出雲大社さんに迎え入れられている」と思うと嬉しくて仕方がありませんでした。物語はこうやって語られ、伝えられてきたのではないかしら。私はある意味、語りの原点を感じることができました。
 その3日後、舞台は津和野町の太皷谷稲成神社へと移りました。ここではご本殿の中から登場し、ご本殿の目の前で語りをさせていただくことができました。ですから、太皷谷稲成神社が一緒に舞台を盛り上げてくださっている。そんな一体感が心強さとなってエキサイティングな舞台となりました。
 このように同じ神話を語っても神社が変われば、舞台は完璧に違うものとなります。その違いに私自身とても驚きましたし、改めて神社のすごさ、大きさ、大切さを実感しました。だからこそ、全国の八百万(やおよろず)すべての神社を回って、日本神話を語り続けていきたいと思っています。嬉しいことに島根の他の神社からお誘いの声をかけていただきましたので、また、島根での語り舞台を実現できそうです。そして、今度は語りの舞台・黄泉比良坂を訪ねてみたいと楽しみにしています(談)
*黄泉比良坂(東出雲町)
黄泉の国(あの世)と現世の境界の地とされ、イザナギ(伊邪那岐)命が、先立たれた最愛の妻イザナミ(伊邪那美)命を慕って黄泉の国を訪ねていくその入口が黄泉比良坂といわれる。古事記ではこの地を出雲の国の伊賦夜坂としている。現在の東出雲町揖屋町にあたると考えられている。
 
津和野めぐりの旅は太皷谷稲成神社から寄進された大鳥居から始まる(津和野町)

浅野 温子
あさの あつこ
浅野 温子
女優。1977年ドラマ「文子とはつ」でデビュー。82年、映画「スローなブギにしてくれ」でヒロインを好演してその存在感を強烈にアピール。映画「陽輝楼」「姉妹坂」「あぶない刑事」、テレビ「101回目のプロポーズ」「まんてん」、舞台「黄昏」他多数出演。ベストジーニスト賞に選ばれるなど女性のファッションリーダーとしても支持を得る。日本アカデミー最優秀助演女優賞、ゴールデン・アロー放送賞など受賞多数。
●浅野温子語り舞台実行委員会問い合わせ先
 電話03-3402-0706

宍戸 開/浅野 温子

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