私と島根 心が柔らかくなる場所・隠岐  昨年4月から約1ヵ月半、私は映画「アイ・ラヴ・ピース」の撮影で島根県に滞在しました。この映画は島根県とアフガニスタンを舞台にしたもので、私は義肢装具士を目指す女性を演じました。
 私は役を演じるにあたって、大田市の義肢装具会社で義肢装具士としての勉強や実習を積みました。義肢装具の型を取るために足の断端部分に特殊な包帯を巻く技術には苦労しました。この技術は単に包帯を巻けば良いという訳ではありません。包帯に含まれた石膏が固まらないように手早く、患者さんの負担にならないように押さえ加減に注意をしながらしっかりと巻くことが必要です。難しい技術でしたが、周囲の皆さんの丁寧な指導のお蔭で日を追うごとに上達したと思います。
 このように島根の皆さんの支えは大きかったですね。例えば、宿泊先のホテルでは毎晩違うおかずが並び、私達の楽しみのひとつとなりました。映画の撮影は体力勝負なので、栄養のバランスが考えられた献立は有難いもの。私は料理をしてくださる方々の気持ちが嬉しくて、毎食、感謝しながら頂きました。そして、がんばろうと思ったものです。
 周囲の皆さんの温かな気持ちに触れ、私は相手の気持ちを考えて行動することがいかに大切かということを実感しました。そして、私は患者さんの注文にどうしたら答えられるか、何ができるのかを考えて演じるようにしました。
 その思いを持って、アフガニスタンに向かいました。アフガニスタンでは戦争の生々しい傷跡、様々な境遇の人達と出会い、心が痛みました。地雷で失われた足の切断面の悪さに大きな衝撃を受け、包帯も上手く巻けず、撮影時は苦労しました。でも、私はこの現実を自分には関係ないと思うのでなく、自分がやらなければならないこと、そのために足りないことは何なのかと考えられるようになりました。たくましく生きるアフガニスタンの皆さんの姿から生きることの責任の重みを教えられたのです。
 帰国後、映画の完成披露試写会のために再度島根を訪れ、懐かしい方々、澄み切った空気、緑の豊かさに触れ、故郷に戻ったような気がしました。私は島根やアフガニスタンで多くの方々と出会い、育てられたのだと実感しています。この映画から受けた刺激、人の心のつながりや出会いを大切に、気持ちの芯を強く持って幅広く仕事をしていきたいと思っています。(談)
大森町空撮写真
世界遺産登録暫定リストに登載された「石見銀山遺跡」の
中心部となる大森町(大田市)

忍足 亜希子
おしだり あきこ
忍足 亜希子
女優。1970年生まれ。99年映画「アイ・ラヴ・ユー」でデビュー。映画「アイ・ラヴ・フレンズ」「旅の途中で」「黄泉がえり」、舞台「嵐になるまで待って」、テレビ「星に願いを・・・」などに出演。第16回「山路ふみ子」福祉賞、第54回毎日映画コンクール「スポニチグランプリ新人賞」受賞。「全国映連賞」女優賞、TOYP(日本青年会議所が主催する国際交流や文化芸術などの分野で傑出した活躍をした若者をたたえる賞)大賞&文部大臣奨励賞受賞。

大田 忠道/忍足 亜希子

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