体験体感島根の旅
   
 
八百萬の神々の風情が滲む町並みを歩く。
旅のレポーター/村上佳子(むらかみよしこ)
しまね観光大使。大阪で生まれ育ち、5年前に島根県へIターン。オフタイムはドライブを兼ねて県内の水族館や美術館、歴史・温泉施設などを探訪。島根の良さを自分の言葉で伝えたいと、各地の魅力を勉強中。最近のお気に入りは、月山(広瀬町)の露天風呂。安来市在住。
旅のレポーター/澤井真希子
神在祭と ”おいみさん(御忌祭)“
心御柱
”宇豆柱”の発掘に続き、3本の柱材を束ねて1本の巨大な柱に用いたことがわかる”心御柱”が出現した。古代の出雲大社本殿のスケール感を物語る。
「大社造」の本殿
日本最古の神社建築様式「大社造」の本殿。切妻造りの屋根は総檜皮(ひわだ)葺きで、屋根の棟で交差する千木は9・8mと長く、3本の勝男木(かつおぎ)を従えて、空に向ってそびえている。
神々の宿舎となる「十九社」
神在り月の間、神々の宿舎となる「十九社」は本殿の東西に1棟ずつ建っている。現在の社殿は、延亨5年(1748年)に造営された。
神迎え神事
(上)強い西風が吹きつける稲佐の浜で、神々の使者・龍蛇神(海へび)をまつり八百萬神々を出迎える“神迎え神事”
(下)七日間の神議りを終えて大社をお立ちになる神々を見送る“神等去出祭(からさでさい)”。神職祢宜1人だけが本殿・楼門の戸を叩いて「おたち、おたち」と唱える。

 切妻造りの屋根にそびえる千木の先端が、空に突き刺さるかのように雄大なシルエットを描く出雲大社本殿。約24メートルという高さは、木造の神社本殿として日本一を誇ります。平成12年には、巨大な心御柱が境内で出現し、古代出雲大社の本殿が日本で1番大きい建物であったという伝承の信憑性が一段と高まりました。“縁結びの神”“福の神”として知られる大国主大神を祀り、全国から多くの人たちが参拝に訪れる出雲大社は、山陰地方有数の観光ポイントでもあるのです。

 鳥居をくぐり、樹齢350年の松並木が続く参道を歩きます。玉砂利を踏みしめるたびに静かに響く足音が心地よく、何だか心が落ち着いてくるから不思議です。「太平洋戦争が終わる頃まで、この参道の中央は身分の高い人が歩く所。参拝に来ても、平民は両脇しか歩けない決まりでした。」―そう教えてくれるのは、ガイドの新宮基弘さん。新宮さんは、平成7年に島根県で開催された「ねんりんピック」をきっかけに発足した『たいしゃ観光ボランティアガイドの会』(正会員12名・準会員24名)の会長さんです。会員の皆さんは、いずれも大社町で生まれ育った人ばかり。地域の歴史や伝統文化の中で暮らしや生き様を紡いできたことを誇りに、訪れる人たちへ実のある言葉で大社町の魅力を発信。海外の研究者をはじめ、年間150回程度のガイドを行っておられます。

 出雲大社で年間とり行われる祭礼は、72回。その中で、旧暦の10月(11月)には全国から集まった神々をおもてなしするために「神在祭」が行われます。10月10日の夜7時、国譲りの聖地・稲佐の浜の神域からお着きになった神々は、神職による「神迎神事」を終えられた後、大国主大神が待たれる出雲大社へ。そして、大社の神楽殿で再び国造(出雲大社宮司)による神迎祭が行われ、本殿の東西に1棟ずつ配置された十九社でお休みになるのです。神々は翌10月11日〜17日までの7日間、出雲大社近くの「仮の宮(上の宮)」で、縁結びや人生上の諸般のできごとを話し合う“神議”を行いますが、十九社はその間のご旅舎となるのです。

 「7日間にわたって神在祭が行われる間、地域の人たちはどのように過ごしていたのでしょうか?」気になったことを新宮さんに質問してみました。「神様たちの神議に妨げがあってはならないと、その間は静かに暮らします。昔は宮でも掃除をせず、各家庭での大工仕事も自粛していました。もちろん歌舞音曲も慎みます。そのように神在祭の間をひっそりと過ごすことから、地元では“おいみさん(御忌祭)”と呼ばれています。もちろん、現在では普段通りの生活をし、土木工事も行われますが、気持ちは失われることなく、付近の住民に語り継がれています。」と答えてくださいました。

 神在祭は、10月17日に終了します。午後4時、祢宜が本殿楼門の扉をたたきながら唱える「おたち、おたち」の声で、神々の出立ちを促す神等去出祭がとり行われます。その後、神々は八束郡の佐太神社に落ち着かれ、10月26日に斐川町出西の万九千社で最後の宴会を開いた後、神立橋から出雲國をお発ちになるのです。

間近で見上げると迫力が増す神楽殿(かぐらでん)の注連縄(しめなわ)。長さ13m、太さ8m、そして重さが5tと、日本一を誇る。
間近で見上げると迫力が増す神楽殿(かぐらでん)の注連縄(しめなわ)。長さ13m、太さ8m、そして重さが5tと、日本一を誇る。
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