秋、県内各地では毎週のように祭りが行われ、神楽が披露される。笛や太鼓のお囃子は人々の心を浮き立たせ、収穫への喜び、そして神への感謝の気持ちを高めていく。音の響きは魂を揺さぶり、時に勇気を奮い立たせ、時に優しさを思い出し、時に明日への希望を与えてくれる。
 島根には音楽を愛し続ける人たちが、様々なジャンルで地道な音楽活動を行っている。そして、島根は多くの音楽家も輩出してきた。音楽に魅せられる島根人たちの心の響きを聴いてみよう。
スーパーマンを目指す歌姫達が生まれた訳
 「亀のようにコツコツと頑張って、スーパーマンになり、宇宙に私たちの歌声を届けたい。私達合唱部のテーマは“宇宙の亀はスーパーマン”!」笑顔で語る少女達は出雲市立第1中学校(出雲市大津町)の合唱部員達。55名の女生徒達が顧問の浜崎香子先生の指導のもと、現代日本の作品を中心に練習を積み重ね、歌う心を温め続ける。
 同校合唱部は昨年、全日本合唱コンクール全国大会で10年連続金賞受賞。NHK学校音楽コンクールでは今年度も全国大会への出場が決定。これで10年連続出場を果たすことになる。周囲は合唱名門校と呼ぶが当の本人たちに気負いはない。「歌が大好き。お互いの声がハモって、みんな同じ気持ちになれたと思うと嬉しくて」と語る。3年生自らが行うパート練習は厳しく、全員が歌えるまで何度でも繰り返す。生徒達の懸命な姿を見守りながら顧問の浜崎先生は「私の役目はもっと歌えるようになりたいという生徒の思いをかなえること。一人ひとりが自信を持つことでかけがえのない自分と人を大切にできます。」と語る。
 同合唱部の活動は多岐に渡る。作曲家・鈴木輝昭氏への新曲委嘱やCD録音、琴やダンスとのセッション、小学校や福祉施設、その他各種コンサート等。活動を支えるのは部活動を学びの場ととらえる同校の校風、保護者、卒業生。他の部活動も活発で吹奏楽部は全国トップレベル、体育部も躍進を続ける。
 浜崎先生自身も努力を積み重ねている。20代〜50代の指導者達と島根県合唱研究会を立ち上げ、松下耕氏、本山秀毅氏等作曲家や指揮者に直接交渉し、県内での勉強会や各学校でのレッスンを開催。参加する指導者や生徒の音楽を求める欲求や好奇心をかりたて、感性を磨き続ける。宇宙に歌声を響かせたいと果てしない夢を描く生徒達。彼女達のやる気に応えるためにも常に能動的でありたいと浜崎先生は語る。
人の声が響き、聴衆者の心に響く。歌の醍醐味を伝え続ける浜崎香子先生
人の声が響き、聴衆者の心に響く。歌の醍醐味を伝え続ける浜崎香子先生
ピンと張り詰めた緊張感の中、自主的にパート練習を行う生徒達
ピンと張り詰めた緊張感の中、自主的にパート練習を行う生徒達

合唱指導者の熱意は伝統的なものだった
 昭和30年代、島根大学の教官たちが全県での合唱巡回指導を開始。昭和37年に設立された島根県合唱連盟は、音楽の早期教育を理念に全国でも異例の小・中学校部門を設けた。昭和46年から著名な作曲家や指揮者を招致。指導者の合宿講習会を開始。一連の取り組みが県の合唱レベルを引き上げ、錦織健氏、福島明也氏、経種廉彦氏等多数の声楽家を輩出。各コンクール全国大会で島根県勢は常連となり、合唱王国と呼ばれるまでとなった。指導者達は学校の枠組みを越え、社会人合唱団やおかあさんコーラスを誕生させた。10月11・12日、益田市出身の合唱指揮者栗山文昭氏、作曲家の三善晃氏らを講師に招き全国から参加者を募るワークキャンプ「コロ・フェスタ2003大社」を開催。歌の素晴らしさを伝えたいと島根の指導者達の熱意は全国へと拓かれている。
最初は絡み合っていたそれぞれの音が先生の指導で整理され、丹念に紡がれていく。
最初は絡み合っていたそれぞれの音が先生の指導で整理され、丹念に紡がれていく。

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