特集オンリーワンへの挑戦
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 社会情勢の変化、国際経済の広がりと国内経済の構造の変革。
 今、求められているものは新たな価値創造に取り組む産業の振興だ。島根県内には、あらゆるリスクに揺るぐことなく情熱と創造力を携えて時代の潮流に挑み続ける企業がある。さらに島根県も産業の高度化、新産業の創出につながる研究開発や徹底的な支援を展開中だ。先端的・独創的な取組みを行う企業、新産業創出に向け取り組む、島根県の姿を紹介していこう。
第1章意欲と創造で唯一無二の製品・技術を生み出す企業
「新規機能性を付加した加工米の
開発研究」で農芸化学技術賞を受賞。
世界に誇る米のパワーを島根から発信。
アルファー食品株式会社(大社町)
 会社の裏手に瑞々しい田園が広がるアルファー食品株式会社(森山信雄代表取締役社長・簸川郡大社町)は加工米のトップメーカーだ。(特)日本体育大学校健康センターの委託工場になるなど躍進を続け、全国の学校給食の米飯の90%、業務用市場においても全国一の占有率を誇る。
 加工米飯を中心に各種具材、米飯周辺素材の加工品など商品は多岐に渡る。商品を生み出す要である研究開発は大学や国の研究機関とタイアップ。東京農大の研究所へ社員を派遣し、20年以上にわたって委託研究を続け、さらに、国の研究機関、島根大学、島根県産業技術センターとも共同研究を重ねてきた。
 昨今は食品の機能性に着目。99年、玄米の機能性を活かした加工米の研究開発をスタートした。米ヌカからギャバやセラミドなどの成分を取り出し、独自の特許製法で白米に戻すことで新規機能性加工米の開発に成功。2002年には日本農芸化学学会主催の農芸化学技術賞を受賞した。商品化された成分強化米「げんじ(玄滋)」「かがやき(輝)」を利用したユーザーからは血糖値や血圧が降下した、アトピー性皮膚炎が治ったなど、朗報が次々と寄せられている。
 また、隠岐近海に棲息しながら今まで見逃されていた小魚・キュウリエソを原材料とした調味料を発売した。その名は「万(よろず)」。キュウリエソは血流促進(食品総合研究所(筑波))中性脂肪低下(国立健康栄養研究所)、SOD活性(東北大学)といった機能性に富み、その資源量はイワシの数100倍。島根県水産試験場が利用を提案。同社が国の補助金を利用し、県産業技術センターの支援を受けながら開発。最も難点であった魚の臭みを料理研究家の佐川進先生のアドバイスで克服した。一振りでプロ並みの旨みと風味が出て体に良いことから、利用者は着実に広まりつつある。
 「年々、食品に対するユーザーからの要望は高まる一方。私達は品質の追求を続け、是が非でもその声に応えていく」と研究開発部長の奥井学さんは語る。食へのこだわりが高まりつつある現状を好機と捉え、研究開発に力が入る。
 森山社長は「米を中心とした食文化を島根から発信。世界の食文化をみつめ、健康・美味・簡便の3つの提案を進めたい。食料自給率アップにも貢献したい」と語る。確かな技術とノウハウ、そして揺るぎない理念。同社は食品業界のパイオニアとして注目を集め続ける。
 
美味しさと機能性を兼ね備えた商品群
玄米成分強化米「げんじ(玄滋)」「かがやき (輝)」、無添加・仕上げ調味料「万(よろず)」
 
米の成分分析を行う研究員

和紙とゼオライトで
健康な生活を提供
和紙の可能性にかける
外谷製紙株式会社(八雲村)
 古くから出雲和紙の産地であった八束郡八雲村。外谷製紙株式会社(外谷眞治代表取締役)は同村の紙漉き技術を指導する伝習所として明治32年に設立。戦後は書道用紙の生産を手掛け、昭和40年代前半までは国内屈指の業者として知られた。しかし、その後は機械化による価格低下、書道用紙の需要の伸び悩みで経営危機が訪れた。模索を繰り返す中で、4代目となる外谷社長は和紙の機能性に着目。安価で手早く加工が可能という点を何かに応用しようと考えた。
 同じ頃、島根県は県西部に埋蔵される鉱石・ゼオライトの特産化をすすめていた。ゼオライトは脱臭、遠赤外線発生、イオン交換などに優れた能力を持ち、人体に有効成分を持つ鉱石。これを滅菌作用に優れた和紙に漉き込んで健康用品ができないか。島根県立工業技術センター(当時)などの協力を得て、約10年がかりで開発。介護用の脱臭用紙の生産を開始。大手製薬会社のエーザイと提携し、動物の傷口に貼る保護テープ「クリニバン」を商品化した。さらに人体用が医療機関で使われるようになった。床ずれを治癒させるなどその効果は絶大だ。将来は主力製品にと考える。
 また、シリコンゴムチューブの中にゼオライトとトルマリン粉末を入れた健康用具「トルン・シリーズ」を開発。肩こり、腰痛、ひざ痛を緩和すると、女性層や高齢者層を中心に人気を呼び、瞬く間に全国的な大ヒット商品となった。また、現在ペット用も販売を開始し、人気を博している。
 この7月、「ヒーリングサポーター」を発売する。構想約20年。待望の商品誕生となる。これはベルト状のサポーターの中に天然鉱石を微粉末化し、特殊な加工を施した和紙でくるんだシートを入れたもの。このシートを痛みやコリのある箇所に当てておくと、遠赤外線効果で温かくなり、痛みが緩和される。鳥取大学医学部の協力でサポーター使用による体表面温度の変化について明確なデータを得た。
 様々な情報やアイディアは和紙や商品を通じて出会う人々から授かる。さらにゼオライトに関しては、県の産業技術センターの先進的な研究と膨大なデータが後押ししてくれた。だから、「商品は皆さんが作り上げている」と外谷社長は言う。一人では何もできないのだとも。常日頃思うことは「あの人を助けるのは俺だ」。人を健康にしたいという純粋な思いと和紙へのこだわりが次なるヒット商品を生み出すきっかけとなっていることは間違いない。
 
ゼオライト(左)、トルマリン(右)
 
東京をはじめ全国で販売されている「トルン・シリーズ」
 
シリコンゴムチューブに鉱石を詰め込む作業
技術屋の誇りと情熱をかけて
世にないものを創り出す
メカトロニクスのプロ集団
エステック株式会社(東出雲町)
 昨年、田中耕一氏のノーベル化学賞受賞で一躍注目を浴びた構造ゲノム(遺伝子情報の総体)科学研究。タンパク質の構造を解析し、その機能を探るプロジェクトが世界規模で進展する中、八束郡東出雲町にあるエステック株式会社(永島正嗣社長)では理化学研究所と共同で、世界初のタンパク質自動結晶化観察ロボットシステム「TERA(テラ)」を開発した。
 同システムはタンパク質のX線結晶構造解析に使用する結晶を生成し、成長状況管理を全自動で行う。これまではタンパク質の構造解析に必要な優れた結晶の生成や観察作業はすべて手作業で行われてきた。同システムの誕生で一連の作業が自動で、24時間可能となり、作業の迅速化と効率化が進んだ。日本の構造ゲノム科学研究を飛躍的に進歩させる礎となった。
 画期的なシステムを誕生させたエステック株式会社の創業は1991年。営業品目は大型疵取グラインダー・製鋼試料調整機・超硬丸鋸切断機・真空装置など多種多様。「どんなものでも創ってみせましょう」と永島社長は言う。取引先は全国の大手金属会社、自動車メーカー、精密機器関係など、最先端の企業と技術者達。ユーザーが抱える課題を徹底的に話し合い、理想的な機械を創り上げる。
 九四年には試料の前処理を全自動で行う機械の製品化を成功させた。世界初の快挙となった。誰もやっていないことに挑戦し続けることを信念とする永島社長。「すでに発明は終わっている。私達は先人達の技や知恵をいかに組み合わせるのかが勝負だ」と語る。自らを工業デザイナーと呼ぶ。機械はただ動けばいいというものではない。安全性とともに、人間工学に基づいた美しさと操作のしやすさを重視する。働く人たちの気持ちを考えた設計が重要だと永島社長は力説する。
 しまね産業振興財団の協力のもと、更なる製品開発にも力を入れる。県の補助金で蛍光灯を安全に簡単に破砕・減容する「ランプクラッシャー」を製品化。現在は重金属関係の開発工事の際の土壌分析を行う機械を開発中だ。
 「お客様に満足していただき、私達が納得し、いい仕事を続けていくために走り続ける。ありがたいことに私は人との出会い、運に恵まれている。ニッチ産業のモデルとして今後起業を目指す若い人たちの刺激になれば」と語る。活躍の舞台は世界へと広がりつつある。その基本は機械一台一台を大切に作り上げること。「世界を拓き、私達の思想を広めたい。」同社の見据える先は果てしない。
安全性と美しさ、操作のしやすさを追及し、新たな設計が行われる。
世界初のタンパク質自動結晶化観察ロボットシステム「TERA(テラ)」
精密な加工作業を経て、多種多様な製品が生み出される。

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