仁摩サンドミュージアム外観
大小6基のガラスのピラミッドは仁摩町のシンボル
海辺のまち、仁摩町・温泉津町で「砂」と「土」の工芸体験
 江戸時代に幕府の直轄領として栄えた「石見銀山」。島根県西部の日本海沿いに位置する仁摩町と温泉津町は、石見銀山の栄華を物語る史跡に彩られた町並みが今なお残っています。夏の陽射しに輝く、おだやかな碧い海。波が岩を噛むように打ちつける、真冬の鈍色の海…。山陰線の北側に広がる雄大な日本海の“もう一つの顔”と、海辺の町で育まれた文化に出会いたくて、ぶらりと出かけてみることにしました。
旅のレポーター/池田珠実(いけだたまみ)
旅のレポーター/池田珠実(いけだたまみ)
しまね観光大使。東京での大学生活をへてふるさと島根にUターン。趣味はドライブをかねての日帰り温泉めぐりとミステリー小説を読むこと。家族・2匹のネコと共に、松江市在住。


世界最大の一年計砂時計が時を刻むスケール感に圧倒
砂博物館「仁摩サンドミュージアム」
 
館内に常駐するスタッフがていねいに展示の説明をしてくれる
  国道9号沿いの小高い丘から日本海を見下ろすように立つ、仁摩健康公園。広大な敷地の中に、ナイター照明を備えたテニスコート・多目的広場があり、花時計・日時計・遊具などが点在する芝生公園と町並みを一望できる展望台は、散策に訪れた家族連れやカップルで賑わっています。その健康公園に隣接し、町のシンボルのようにそびえているのが、平成3年3月にオープンした「仁摩サンドミュージアム」です。太陽の光りを導く、大小6基のガラス張りのピラミッド。最大の1基(高さ21メートル・底辺17メートル四方)の中に納められている「砂暦」を訪ねました。暖かい陽射しが降り注ぐフロア内に入ると、まるで温室の中に居るような気分です。吹き抜けの天井を見上げると、まず目に飛び込んでくるのが、巨大な「世界最大の1年計砂時計」です。直径1メートル、高さ5.2メートル。総量1トンの砂が365日間で落下する仕組みになっています。砂1粒の直径は、平均で0.106ミリ。およそ6400億の砂粒が、コンピュータで制御された直径0.86ミリのノズルを通し、1日に約2740グラムずつ流れていると知り、ため息が出てしまいました。毎年大晦日の深夜12時に、綱引きによって砂時計を回転させるのですが、その綱を引くのは、108名の年男・年女たち。全国から希望者を募るこのイベントは、仁摩町の名物として定着しています。
  ホールには、この1年計砂時計の実物大モデルや砂のオブジェ、そして仁摩町の鳴り砂に関する資料が展示され、顕微鏡で鳴り砂の粒子や色鮮やかな微小貝を観察することもできます。また、地元にちなんだ写真や絵画にふれるアートギャラリーやAVホールが常設されていて、興味津々です。この日は、すぐ近くにある琴ケ浜海岸に伝わる「時・砂の伝説」のマルチスライドを観賞。砂にまつわる神秘的な伝説が、とてもロマンチックに感じられました。
 
1トンもの分量の砂が365日間で落下する「砂暦」
鳴り砂の粒子や日本各地の砂浜の砂を観察できるのも「砂博物館」ならでは ガラス工芸でオリジナルの
ペーパーウエイト作りを体験

ふれあい交流館ガラス工房
 
出来上がりを想像すると馴れない作業にもワクワク
 「仁摩サンドミュージアム」の目と鼻の先にある2階建てのおしゃれな建物が、「ふれあい交流館」。ここでは、世界最高と称されるチェコスロバキア産のボヘミアガラスをはじめ、ガラス工芸を主体とした伝統的な作品が展示されています。それらを目にするだけでも楽しいのですが、せっかく訪れたので1階のガラス工房でオリジナルの作品づくりにチャレンジすることにしました。“砂の町で、なぜガラスなのか…?”そんな疑問に応えてくれたのが制作を指導してくれる指導員さん。ガラスの原料は、60パーセントが砂であると聞き、納得しました。まず、サンドブラストという製法で、ペーパーウエイト作りです。
 
ブラストの機械にかける工程だけは専門家におまかせ
出来上がり ガラスに貼り付けたカッティングシートに自分の好みの下絵を描き、マジックで線をなぞります。そして、ブラスト(高圧で砂をふきつける)したい部分をカッターで切り取ります。専用の機械でブラストすると、浮き出たように模様が姿を表すのです。ブラストは指導員さんが手がけてくれましたが、私が描いたイラストが、そのままガラスの中に封じ込まれたような感じで、完成したときはとてもうれしくなりました。1000℃以上の高温で色ガラス棒を溶かしていくと、涙の粒のような形に様変わり
1000℃以上の高温で色ガラス棒を溶かしていくと、涙の粒のような形に様変わり また、ガスバーナーを使って好みの色ガラス棒を溶かしていくバーナーワークも初体験。本物のガラス工芸品にはおよびませんが、自分で作ったと思うと喜びもひとしおです。そして、ふだん私の身近にあるグラス類や花瓶など、美しいガラス製品の作り方の原点にふれたような気がして、とても充実した時間を過ごせました。“オンリー・ワン”の手作りアクセサリーが完成
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