美味お国自慢薬用人参 生食を始め、加工工程で精製される液汁を煮詰めた「人蔘精」、粉末加工された「人蔘粉末」など、従来からの人参製品に加え、「人蔘入り珈琲」や、「人蔘飴」など、新たに開発された八束町産の薬用人参商品。今後、さらに注目を集める商品の開発に期待がかかる。
美味お国自慢薬用人参(八束町)
 中海に浮かぶ周囲16キロという小さな大根島(八束郡八束町)。この島に訪れた人なら、誰でも目にするのが、穏やかな丘陵地帯に、低く連なった屋根の広がる、薬用人参(高麗人参)栽培の風景だろう。
 長野県、福島県と並び、全国の3大生産地となる八束町に、薬用人参の歴史、現状。新しい試みなどを訪ねてみた。
薬用人参の加工場 みなさん、「薬用人参」をご存じだろうか。別名「高麗人参」とも呼ばれる、漢方特有の独特な苦味をもったこの植物は、朝鮮や中国の山間部に自生していたウコギ科の多年草の一種で、古くから漢方薬としての高い薬効が尊ばれ、秦の始皇帝が愛飲して以降、一躍、世に広まったと伝えられている。
 八束町の人参栽培の歴史は、松江藩が、安永3年(1773)に藩営の人参畑を現在の松江市に開墾したことに始まる。その後、藩の財政を潤すまでに成長した人参栽培は、幕末には、松江市を始め、八束町を含む周辺28ヵ町村で栽培がおこなわれ、とりわけ、八束町はミネラルを豊富に含んだ火山灰土質だったことから人参の栽培に適し、他の産地で作られるものに較べ、群を抜く品質を誇った。以降、松江藩の厳重な管理下に置かれ、「雲州人参」として、海外でも高値で取引されるまでになっていく。
 冒頭でも述べたとおり、八束町は、全国の3大産地になっているが、八束の人参栽培の歴史を紐解いても分かるように、人参栽培に最適な土質であったため、現在でも他県産と較べ、本場韓国産の品質に負けないものとして、高い評価を受けている。しかし、種まきから収穫まで6年を費やすという長い栽培期間や、連作を嫌う性質のため、一度収穫した畑では、10年間作付が不能になるなど、栽培する面積確保の難しい作物。そんな厳しい栽培条件のため、全盛期には300軒余あった生産農家も、現在、30軒ほどに減少した。さらに、最近では安価な中国産の台頭で、苦労とは裏腹に単価が安くなるなど、現場からは、年々深刻な声も聞こえてくるようになった。
 
大山を望む、薬用人参の栽培畑。起伏のない、平坦な八束町の大地に、四季折々の表情を見せる。
 
 
人間の四肢の如く、伸びやかな根を持つものほど、高い価値の生まれる薬用人参。
 しかし、品質ではどこにも負けない八束町の薬用人参。そうした問題に、ただ手をこまねいているだけでなく、近年では、さまざまな対策が打たれるようになった。
 八割が加工品だった生産ラインを見直し、密植栽培によって成長を早めた四年根での出荷など、生での販売に力を入れることで、加工に対するコストの削減を図り、加工品に関しては、従来は粉末とエキスだけだった人参を飲みやすいカルシウム入りの錠剤として販売したところよく売れだした。さらに、こうした加工品の中でも、最近、問い合わせが多いものとして、人参飴や人参コーヒーなどがある。これらの加工品は、飲みやすくして好評を博した錠剤とは反対に、人参の風味として最大の特徴である“土の香り”をあえて残しているのだという。苦手なものにとっては、最大の難関である、“土臭さ”をほのかに残すほうが、人参愛用者に好評というのも面白い結果だ。また、天ぷらの具としても人気があることから、全国の日本料理店に向けての販売も計画しているという。また最近では、八束町の風物詩のひとつである10月開催の”秋のボタン祭り“で、人参に、鶏肉、野菜を入れて煮込む”人参汁“のサービスが評判を呼び、八束町の人参生産の活性化に一役買っている。
 苦いだけのように思われている薬用人参。体に良いから飲む、というだけでなく、こうした“美味しい食材”としての可能性を考えることで、本当の活性化が見えてくるように思える。

◎問い合わせ先
JAくにびき八束支店
0852-76-2525

●前号のお詫び(西条柿)
前号(46号)でご紹介した「西条柿」について多くのお問い合わせをいただきましたので、再度情報を掲載いたします。発行スケジュールの都合で「西条柿」の旬を過ぎて掲載しましたことをお詫び申し上げます。
■主な産地:東部・松江市、平田市 西部・益田市、三隅町、浜田市
■収穫・販売時期:10月始めから11月中旬
■「西条柿」に関する問い合わせ先:
 全国農業協同組合連合会島根県本部
米穀農産部 農産課 電話:0853-73-9526

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