私と島根 堀江美都子
故郷に流れる風
 
高瀬川で行われる筒描き藍染ののり落し作業(出雲市)
 もうずいぶん前のことですが、父の故郷の出雲へ両親と一緒に帰った時が、私が初めて島根を訪れた時でした。父の実家は出雲市駅からそう遠くない大津大曲というところに現在もあります。その家の前に高瀬川が流れ、川の両岸に植えられた柳や、小さな木の橋がなんとも風情のある町並みを作り出していました。その後幼い頃何度か訪れる機会がありましたが、時には鳥取砂丘や松江の町を見たり、玉造温泉に泊まったりと途中下車の旅も楽しみました。今のように空港はなく、横浜から列車を乗り継いで行くにはとても遠かったように記憶しています。でもなんと言っても私のお気に入りは寝台特急「出雲号」、走る秘密基地のようでワクワクしたものです。そして出雲大社の荘厳な雰囲気に圧倒され、日御碕から見たエメラルドグリーンに輝く日本海に感動し、斐伊川の川原で聞いた「すさのおのみこと」と「やまたのおろち」の話、「神立橋」のいわれなど、神々の話に夢中になった遠き日々を思い出します。
 平成14年9月に母を病で亡くした直後、この父の故郷に久しぶりに訪れたときも、まだ少し当時の面影が残っていました。私が生まれる前にもきっと父と母がこの風景を眺めていたんだろうなあと思うと、海や山や町並みや人々が、とても感慨深く、熱いものがこみ上げてくるのを抑え切れませんでした。
 仕事で訪れた島根、子ども達のコンサートでいつも子ども達からパワーをもらっています。まっすぐな瞳、純白のこころに接するたびに、日本語の持つきれいな響きをメロディーにのせてせいいっぱい歌わなくてはと思います。私を育ててくれた両親のように、子ども達にいい環境でいい音楽を聴かせてあげたいと思っているのです。島根で出会ったたくさんの子ども達、元気でした。あなた達に会えて嬉しかったです。ありがとう。いつまでも覚えていてね、故郷に流れている風を。
 コンサート終了後、足を延ばして訪れた出雲大社で拝聴した「笙」「ひちりき」の音色に心が洗われる思いでした。やはりここは神様のいる場所だと感じずにいられませんでした。
 今は一人になった父を故郷の温泉に連れて行ってあげたいと思う今日この頃です。

堀江美都子
ほりえみつこ
堀江美都子
 歌手・声優。コロムビアレコード所属のアニメ歌手第1期生。「ドラえもん」「キャンディ・キャンディ」などこれまで歌ったアニメ曲は約700曲。オリジナルアルバム制作やコンサート活動も意欲的に行う。アニメグランプリで連続グランプリ受賞。声優、ミュージカル、DJとしても活躍中。アルバムに「INMYHEART」など。

鈴木 健二/堀江美都子

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