私と島根

私の心のふるさと津和野

根本 りつ子 ねもと りつこ
女優。高校卒業後、CMのモデルやナレーションなどで活躍。昭和57年、テレビ小説「女・かけこみ寺」のヒロインに抜てきされ、デビュー。以来、テレビドラマに数多く出演、また「料理天国」のレポーターもつとめる。62年4月根本りつ子に改名。他の出演にドラマ「大岡越前」「暴れん坊将軍」など。旅行好きで「ネパール凡人旅行」の著書がある。

根本 りつ子

色とりどりの鯉が泳ぐ掘割(津和野町)
色とりどりの鯉が泳ぐ掘割(津和野町)
 誰にも憧れの地があると思うのですが、私にとって学生の頃より思いを馳せていたのが、津和野町(つわのちょう)。その願いが叶って初めて訪れたのは、20数年も前のことになります。自分たちで計画した女友達2人との小旅行でした。その時の事は、今でも鮮烈に思い出されます。車窓より山々の景色を楽しみながら、やっと降り立った津和野の駅は、思った以上にシンプルで木造りの可愛らしい駅。駅を背に右の方へ歩き始めると― あっ、あの鯉、こい、コイ。写真や雑誌で津和野の顔のように紹介されている一場面が目に飛び込んできました。道の端を流れる水の中、丸々と育った立派な鯉。背中の赤、白、金色の鮮やかな模様が印象的でした。手を伸ばせばすぐそこに、ゆったり泳ぐ鯉たちは、子どもや猫にいたずらされないかしら、泥棒は?とつい狭い心が顔をだします。
 歴史を感じさせる町並みからもう少し足をのばすと、山々に囲まれ、その谷間に大きくうねった川を見渡せる場所にでました。川を覗き見れば、小魚たちが群をつくり、岸に上がろうと亀が顔を出す。少し先にはサギが美しい姿を見せ、空には山鳥たち。もちろん大きな建物はなく、緑の風景の中にポツポツと家々の屋根が見え隠れしています。まさしく私が想像していた日本のふるさとのイメージにぴったりのところ。美しく、静かで、なによりもあたたかい自然の息づかいが感じられる場所。居心地が良く、しばらく3人でたあいのないおしゃべりを楽しみました。
 その後、取材や旅番組で津和野を訪れたのは4度程。まだまだ一度も行った事のない地がたくさんあるのに、なぜか津和野とは縁があるように思えてなりません。
 昨年、11月の中頃、津和野町出身の画家安野光雅(あんのみつまさ)先生とお会いする機会がありました。津和野の町を歩きながら、先生の幼少時代のお話しと共に、当時の津和野の話に花が咲きました。安野先生のお人柄からも津和野がますます身近に感じられ、東京に戻った今でも、何かの拍子にフッと津和野の風景を思い出す事があります。
 東京生まれの私には「ふるさと」と呼べる所はありませんが、津和野はなぜか昔を思い出させてくれる懐かしい空気に包まれているように感じます。弥栄神社近くの、おばちゃんの手づくりおいなりさんの味。次に頂けるのはいつでしよう。

[ 清水 國明 / 根本 りつ子 ]

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