安来節に聴く島根の魂
金沢明子


「アラエッサッサー」のかけ声に、身も心も沸き上がるあの有名な安来節。この歌の出生地である島根には、舞台や旅番組のロケーションなどで何度となく訪れる機会があったのですが、この地に足を運ぶたび、この安来節は新鮮な驚きとエネルギーを私に与えてくれるのです。歌だけにとどまらず、気さくな宴会などでもよく見かけるあの踊りは人々にすぐ真似てみたいと思わせる不思議な魅力を持っています。その半面、すこしだけかじってみようとした安来節の唄、三味線、太鼓そして鼓にどんどんはまっていき、気がついたらあっという間に10年、20年が過ぎてしまったという当地の方々のお話を伺うと、魔力と言っても過言ではない土地とそこの人々の深く、熱いパワーを感じられずにはいられません。

それ故、この安来節という大きな唄はそれを歌わんとする歌手にとって、大変に大きいプレッシャーを伴うものです。江戸時代から歌と踊りを融合させたミュージカルのような総合芸術として練りに練り上げられてきたものなのですから、積み上げられ続けた魂を感じること無しに表現しようとすれぱとんでもないバチがあたりそう。技術で歌いこなすのではなく、島根の人達の力強さ、優しさ、その他の喜怒哀楽が全て表現される安来節に己の魂を同調することなしにはこの唄を表現する手段はないと思うからです。

しかしながら、一旦その心を開いたものには至上の喜びと幸せをもたらしてくれるのが安来節の最大の魅力であり、それを育んだ島根の風土や人々の魂のあらわれであるに違いありません。多くの郷土芸能が形骸化してしまっていく現代の傾向にあって、いつまでもその魂を失わず受け継がれていく数少ない芸術として、累敬の気持ちを大切にしながら、いつまでもこの安来節に親しんでいきたいと考えています。歌手としては恐いけれど何故か聴きたくなって、そしてついには歌いたくなってしまう自分自身にとって安来節はそういう唄なんです。

金沢明子 写真
かなざわ あきこ
歌手。昭和45年全国民謡大会で史上最年少で優勝。53年からNHK「民謡をあなたに」のレギュラーとなり、そのジーンズ姿が若者達の心をとらえ、民謡ブームをつくった。レパートリーは300曲。『イエローサブマリン』『おしんの子守唄』などヒット曲多数。海外公演、テレビドラマ出演などその活躍ぶりは多岐にわたる。夢は民謡のミュージカル。安来市の観光PRビデオのナレーター役も務める。
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安来節に歌われる社日桜と十神山(安来市)

[ 坂田明 / 金沢明子 ]