島根

シマネ・ロマン
見城美枝子

関東で生まれ育った私にとって島根は遠い存在だった。それは、北海道や九州のように海を飛ぶ距離とは違い、陸の繋がりがありながらも関西の先で更に日本海側に向かって山並みを超えた向うという陸続きの遠さ、関東までは見えてこない距離感だった。しかし、その隔たりは島根の人達との出会いによって、今、ぐんぐん近くなっている。

私と島根県との出会いは二人の島根県人の方から始まった。何事も初めが肝心と言うが、幸いな事に私が最初にお会いしたお二人は飛び抜けていい方だった。「お人柄」という表現があるが、まさにこのお二人に共通するのは人の良さと笑顔の良さ。さすがに神さまの国の方だと思っていたら、お一人の方が早速出雲へお招き下さった。日本の古建築を学ぶ者として一度は見ておきたかった出雲大社へは部下の方が案内して下さったが、またこの方が容貌も含めいい方で、その良さの質は品格とほのぼのとした心と感じている。

例えば私は、出雲大社の一画にずらりと並んだ小型のお宮が神無月に全国から集まる「神様方の宿」と知って何とも嬉しくなってしまったのだが、小泉八雲も日本という国の形をこういった出雲の風景から感じとったのだろうか。

神在月へのこうしたはからい、それは私の出雲へのロマンに繋がっている。

次に私が出会ったのは島根の心意気のいい女性たちだ。浜田市で行われた「海と渚のシンポジウム」で手作りのかまぼこを作っている方とご一緒した。彼女が「漁師の妻」と自己紹介した時、私はまたもや毅然とした気品と海への誘いを感じてしまった。夫が釣ってきた魚は一匹たりとも無駄にはしないという潔さが混ざりものなしの美味しさになっているのかもしれない。

その話をかの最初に出会った島根県人のお一人に話したら、「そこは石見の海。今度は自分が育った石見の山へ案内したい」

いつの日か、シマネ・ロマン。

日本の根っこだからだろうか、私は今島根に心惹かれている。

見城美枝子 写真

けんじょうみえこ
エッセイスト・テレビキャスター。TBSアナウンサーを経て、フリーに。著作、講演、対談など幅広い活躍をするかたわら、日本建築の研究を進める。平成7年、早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。11年4月、博士課程入学。9年より青森大学社会学部教授。著書に「女は悩んで美しくなる」「すぐに役立つ手紙・ハガキ実例集」「25時のテイクオフ」「タフでなければ女でない」他多数発表。
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人々を育む石見の海

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