境屋太一 知事対談

●島根県知事
 澄田信義
●経済企画庁長官
 堺屋太一

21世紀に向けた
魅力ある地域づくり

澄田信義
堺屋太一
経済企画庁長官、作家、経済評論家。昭和10年大阪市に生まれる。東京大学経済学部卒業後、通産省に入省。大阪万博、沖縄海洋博などを手掛ける一方、『油断!』『団塊の世代』などのベストセラー小説を執筆する。53年退官後は執筆、テレビ、講演などで幅広く活躍。平成10年より小渕内閣の経済企画庁長官を務める。著書は『知価革命』『組織の盛衰』など多数。平成9年より連載を開始した朝日新聞「平成三十年」取材のため、島根県を数回訪れている。
澄田信義
島根県知事。島根県出雲市出身。東京大学法学部卒。和歌山県警察本部長、日本国有鉄道常務理事を経て、昭和62年より現職。現在4期目。

明るさが見えはじめた日本経済

知事 本日はお忙しいところをおいでいただき、ありがとうございます。堺屋長官とは昭和10年生まれ同士で、昭和初めての亥年の集まり「初亥の会」でもご一緒してますね。さて、経済企画庁長官になられて1年が過ぎようとしていますが、この1年を振り返ってどのような感想をお持ちですか。
堺屋 政治家がよく働くことには驚きましたが、特に感じたのは、就任後しばらくの間、日本経済が本当に悪かったということです。それでも昨年10月以降、20兆円の中小企業借入保証や公的金融機関の融資枠拡大、金融再生法の制定、緊急経済対策など迅速な手を打ったことで、少し明るさが見えてきました。今年に入ってからは1〜3月期のGDPが大きく伸びるなど、いろいろなところで動きが出てきています。ただ雇用や企業利益については非常に悪い水準です。いわば卵からかえったトキ2世の3日目か、4日目といったところです。楽観せず、大事に育てなくてはいけません。

新しい産業の創造

イメージ図
ソフトビジネスパーク完成予想図
知事 去る7月8日に閣議決定された新経済計画では、堺屋長官ご自身もかなり筆を入れられたと伺っています。この計画の中で今後伸びゆく分野として情報通信ネットワーク産業や介護サービス産業などが挙げられていますが、島根県でも平成13年には松江市に「ソフトビジネスパーク」が完成します。ここは、全国でも例のない市街地近接型の研究エリアであり、産学官連携のもとに新産業創造の地として、情報・通信産業、環境関連産業、ライフサポート産業などを育成するつもりです。
堺屋 島根県がソフトビジネスパークで展開しようとしておられる、情報・環境・健康・福祉分野等の産業育成は、21世紀に向けて我が国が進むべき方向であることは、言うまでもありません。特に最後に言われたライフサポート産業は重要だと思います。というのは、今の世の中エレクトロニクスやバイオテクノロジーなどは大変な勢いで進んでいますが、すべてが物凄いスピードで進んでいるわけでもありません。例えば船舶や飛行機の技術です。去年アメリカで退役になった戦艦ニュージャージーは、太平洋戦争直後に完成したもので艦齢が53年まで現役でした。飛行機にしても、ジャンボジェット機ができて約30年が経ちますが、いまだ現役です。宇宙船にしても同様です。
知事 今年はアポロ宇宙船が月に着陸して30年目にあたるそうですね。先日テレビの特集番組を感激しながら見ました。30年経っても、確かに基本機能は変わっていませんね。
堺屋 その一方でエレクトロニクスやバイオの分野では、3年前のものは使い物にならないぐらい急速な勢いで進歩しています。世の中の進歩は分野によって大きな差があるのです。このことは、これからの地域開発や日本経済の振興を考える上で考慮に入れておく必要があります。
日本では新規産業というと、ハイテクばかりが話題になりますが、アメリカでも増加している数が一番多いのは出張料理(ケータリング)とか、掃除請負いなどの家事のアウトソーシング(外部委託)なんです。こうした産業が拡がると、安心して夫婦共働きができるし、高齢者が楽しく生きることもできる。これからの少子高齢社会を考えると、日本でも、家事のアウトソーシングを増やしていかなければなりません。例えば家族が留守のときにペットを預かる、宅配便を受け取るというのも大切なサービスの一つです。
知事 宅配便受け取り業というのはおもしろい発想ですね。私も子どものところへ宅配便を送るのですが、昼間は勤めているので困ることがよくあります。こうした生活に密着した、新しいサービス産業の育成は、21世紀を豊かな社会に導いていく上で重要な視点ですね。


next