しまねの鼓動



◆佐田町

神話のべールに覆われた、溢れんばかりの緑が茂る山あいの郷、佐田町。町の中央を清流神戸川が流れ、その支流を含めた川に沿って民家が散在している。スサノオノミコトを敬いながら豊かな自然に囲まれ暮らす町民は、今自らの手で、新しいコミュニティづくりを始めようとしている。

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美しい山並みに囲まれた佐田町

神話と伝説に彩られた自然豊かな町

八つの首を持つ大蛇、「八又大蛇」を倒し、美しい姫と結婚した出雲神話のヒーロー、スサノオノミコトの終焉の地と伝えられる佐田町。いにしえより語り継がれてきた神話や「七不思議伝説」が人々の心の根に深く刻まれ、そこかしこに、往古の息吹が感じられる。

佐田町は、島根県の東部、簸川郡の最南端に位置し、高さ100〜200メートルの切り立った峡谷に、神戸川が流れる景勝地、県立自然公園立久恵峡からは車で5分のところにある町だ。町面積の85パーセントが森林で、真夏でも山腹から10度前後の冷風が吹き出す「八雲風穴」があり、豊富な自然環境を生かした「目田森林公園」も整備されている。

その佐田町町民の心のよりどころとなっている、スサノオノミコトを主祭神に祭る須佐神社の隣に、平成4年、切明神事(県指定無形文化財)など町の文化と歴史を伝える展示施設「スサノオ館」が建設され、次いで同7年には、温泉保養施設「すさのおの郷ゆかり館」が完成。須佐神社を中心に、町内外の人々が集い賑わう新しいエリアが誕生している。

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橋波地区のコミュニティ活動の一つ
「消費者交流会」のわらじ作り

住民一人ひとりが主役のコミュニティ活動

佐田町は、人口約5千人。1千250軒余りで地域の暮らしを営んでいる。豊かな自然を背景に、稲作や畜産をはじめ、シイタケやメロン栽培、ミソ・漬物など、佐田ブランドの特産品の生産も盛んだ。

しかし、年々人口が減少し高齢化が進むなか、過疎化も深刻な問題となっている。これでは、将来、自治活動が機能しなくなり、消滅してしまう地域も出てくる。「今、町民自身がもっと危機感を持って何とかしなければ、佐田町の将来はない」と、荒木孝町長は、平成9年1月から「コミュニティ・ブロック整備事業」を実行することにした。いわゆる自治会の見直しと住民の意識改革だ。

佐田町の自治会は、現在56。だが、中には、高齢者のみというところもあれば、わずか3軒の自治会も出てきた。そこで、今ある56の自治会を13ブロックに区切り、各ブロックの住民が暮らしやすい地域づくりを、自ら積極的に展開していくよう呼びかけた。そして、各ブロックの集会には役場から担当者が加わり、住民の意見や要望に耳を傾け、住民が真に必要と思う活動に町の予算を付け事業化することにした。

現在8ブロックの地域が「少数戸数地域を助け合う葬祭ボランティア制度」、「神楽伝統芸能伝承」、「農地を荒らさない運動」、「河川美化運動・魚の放流」など、各ブロックの実情に沿った活動を計画・実行している。

一人ひとりが主役となって汗を流し知恵をしぼる地域づくり。それが現在の佐田町の原動力となっている。

topics 農村歌舞伎「むらくも座」
佐田町に古くから伝わってきた農村歌舞伎。一時は担い手不足から途絶えていたが、地域の伝統芸能を後世に伝えようと昭和50年に復活。全国でも佐田町にしか残っていないものを含め約40の演目を持ち、町内の若手有志26人の団員が「出雲歌舞伎むらくも座」として国内外で華やかな舞台を披露している。
平成11年5月には、地域の文化向上と活性化に貢献したとして、サントリー文化財団から地域文化賞が贈られ、今後の活動にも意欲的だ。
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