シマネスクミュージアム

「名所江戸百景 亀戸梅屋敷鋪」
 歌川 広重
1857年頃

安政3年から同5年にかけて刊行された『名所江戸百景』は広重最晩年の作で全119図(うち4図は二代広重の作とされる)からなる大作である。このシリーズにおいて広重は竪版という風景画には不向きと思われる画面を使って、今までに見られなかった空間構成を試みる。近景を一部画面からはみ出すほどに大きくとり、中景を思い切って省き、その奥にある遠景を描く。見る者の視点はまず迫ってくる近景の臨場感を感じたあと、一気に遠景へと導かれ、それが細長い画面で区切られることによって、いっそう空間の広がりを感じる工夫がなされているのである。この大胆な構図は、ヨーロッパの印象派の画家たちにも、大きな影響を与え、とくにこの作品は、ゴッホによって模写されたことで知られている。

(島根県立美術館 主任学芸員 西尾尚子) )

「名所江戸百景 亀戸梅屋敷鋪」 島根県立美術館 ロゴ


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