コラム COLUMN
タラの芽
一足早い春を告げる「日原ブランド」の山菜

南風に追われるように寒い冬が過ぎ去ると、待ちわびていたようにワラビやゼンマイがあちらこちらで顔を出し、山里に春を告げる。中でも、「山菜の王様」として珍重されているのがタラの芽だ。

日原町内で、節分になると玄関や神棚にその枝を魔除けに飾る習慣もあるというタラの木は、高さ1〜2メートル、表皮には無数のとげがある。このタラの木に、4月下旬から5月にかけて芽吹く新芽がタラの芽。長さ5センチほどのぼってりとした形で、柔らかな歯触りと独特の苦味を持ち、天ぷらやおひたし、和え物などさまざまに楽しめる。

このタラの芽の栽培を、島根県で最初に始めたのが日原町だ。昭和63年、農家の後継者不足と高齢化の対策に、比較的軽作業で、農閑期となる冬場に収入を得られる作物として栽培されるようになった。温暖な気候だと病気や虫がつきやすいタラの木は、夏でも冷涼な気候の山間地が栽培に適している。この特徴を利用して、今では、益田市、津和野町、六日市町、美都町、匹見町、柿木村にまで栽培地が広がり、年間およそ2.5トンを生産。島根におけるタラの芽栽培の先駆けとなった日原町の名をとって「日原タラの芽」のブランド名で呼ばれ、九州におけるタラの芽市場の約7割を占めるまでに成長した。

タラの芽 タラの芽栽培は、苗作りから始まる。3月から4月にかけて畑に移植されたタラの苗は、10月から12月になると高さ2メートルほどに成長し落葉する。このタラの木の根元だけを残し、差し木の要領でビニールハウス内へと植え替えると、1カ月ほどで鮮やかな緑色の新芽が出てくるのだ。摘み取った芽はパック詰めにされ、12月から翌年4月まで主に九州方面に出荷される。

こうして、ビニールハウスを利用した促成栽培により「旬のさきどり」を可能にした日原タラの芽は、春の山菜が冬に味わえると好評を呼び、大きさや色の美しさも市場価値を高めている。さらに、料理店での需要が多い忘・新年会や歓・送迎会シーズンでも、切れ目なく新鮮な商品を提供できるのも大きな強味。それは「消費者に喜んでもらいたい」という熱意を持った栽培農家が市町村の垣根を越えて一つに結びつき、タラの芽栽培をしっかりと支えているからだ。

タラの芽栽培によって日原山菜のブランドが定着した九州市場には、第2弾として「日原コゴミ」が出荷され、さらに第3の商品開発も進められている。食卓に一足早く春を告げるタラの芽栽培は、山間地の農業を活気づけ、新しい可能性を開く牽引力となっている。

◎問い合わせ先/JA西石見 日原タラの芽生産組合 TEL08567-4-0226


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