シマネスクミュージアム

「冬の川(東)」
 香月泰男
1963(昭和38)年制作

画家として活動していた香月は、第2次世界大戦で召集され、終戦後にソ連の捕虜として約2年間シベリアヘ抑留された。この時の過酷な体験は代表作である「シベリア・シリーズ」を生み出すことになる。本作は晩年に故郷山口県の三隅川を描いたものであるが、厳しい寒さに凍りついた川を、ざらざらとした絵肌をもった画面に、つやのない黒と灰色だけの色彩で描いている。その表現は「シベリア・シリーズ」を彷彿させる。香月はつらいシベリアでの体験を描くことをやめようと思いつつも、結局、没するまで描き続けた。故郷の川を描いてさえも、シベリアでの体験は色濃く影を落としていたのである。

(島根県立美術館 学芸員 真住貴子)

「冬の川(東)」 島根県立美術館ロゴ


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