コラム COLUMN
津田かぶ漬
ひなびた風味と鮮やかな赤紫が冬を彩る漬物

津田かぶ 11月も中旬になると、松江市近辺で津田かぶを天日干しする光景が見られるようになる。稲の天日干しに使われた「はで」と呼ばれる木組みに、整然と並ぶ津田かぶの葉の濃い緑色とかぶのつややかな赤紫色が、澄み渡った青空の下にひときわ映える。雪が舞う12月まで見られるこの風景は、初冬の訪れを告げる松江地方の風物詩となっている。
津田かぶは、出雲そばと並ぶ松江市の名産品、津田かぶ漬の原料だ。江戸時代、津田村(現在の松江市津田地区)にあった松江藩の菜園場で栽培されていた江州(現在の滋賀県)の日野菜を、明治初期に立原紋兵衛氏が品種改良し、津田地区一帯で作るようになったことから名付けられたといわれている。独特の芳香と甘味を持ち、肉質が柔らかくきめが細かい津田かぶは漬物に最適。そして、何とも不思議なのはかぶの形が勾玉に似ていることだ。生育するにつれて、葉の重さでかぶが湾曲するという説もあるが、県外など他の土地では、このような形にならないという。この地方の気候と風土が育んだ、神話の国ならではの産物だ。
津田かぶ漬が商品化されたのは昭和初期のころ。もともと、野菜の少ない冬場の保存食として作られていた津田かぶ漬は、現在、松江市内だけで生産量約150トンを誇る特産品へと成長した。その8割は土産や贈答品として県外へ発送され、今や全国各地の冬の食卓を彩っている。
津田かぶ漬 その作り方は手作業中心で、今も昔も変わらない。まず、収穫したかぶを葉付きのまま洗い、5、6本にまとめて「はで」にかけ、およそ1週間天日干しする。この時期に吹き始める冷たい季節風は、葉の青さを保ちながらかぶを程よく乾燥させる大切な役割を果たしている。そして、水分が抜けて元の重さの約半分になったかぶを、糠と塩で1週間ほど漬け込む。こうして、収穫からおよそ2週間で津田かぶ漬ができ上がる。
かぶの表皮の濃い赤紫色と真っ白な切り口との対比は実に鮮やかだ。また、大根とは違う柔らかな歯ざわりと、一口ごとに広がるかぶの甘味とほのかな酸味も、ほかの漬物とは一味違っている。
最近はサラダ感覚で食べる浅漬けも人気だが、津田かぶの旬はやはり11月下旬から12月。大きく育ったかぶを使い、1年に1度だけ行う「本漬け」と呼ばれる糠漬けは、松江の冬の代表的存在なのだ。

◎問い合わせ先/松江観光協会 TEL0852-27-5843


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