島根新百景
奥出雲おろちループ
中国山地に巨大な「オロチ」が現れた。
そして、その「オロチ」は、多くの人をこの町へ連れてきた。

島根県南東部、奥出雲地方の最南端にある横田町。この地方では、良質な砂鉄と森林に恵まれたことから、「たたら」による製鉄が盛んになり、明治中期には日本全国の鉄生産の約6割を生産するほど栄えた。また、横田は「雲州そろばん」の産地としてもその名をはせた地である。しかし、時代の移り変わりとともに当時の栄華は徐々に薄れ、現在、町は過疎と高齢化の問題を抱えている。
その横田町に平成4年、全長2,360メートル、区間標高差105メートルを誇る日本一の「奥出雲おろちループ」がお目見えした。日本にいくつかある著名なループ橋の中でも、完全な二重円を描いているのは、ここ「奥出雲おろちループ」だけ。その名の通り、この橋は出雲神話の「ヤマタノオロチ」をイメージした造りになっている。例えば、橋の入り口にあたるトンネルにはオロチの目が光り、とぐろに当たる二重ループの側面には、オロチが巻き起こす「火」や「風」といった自然現象がデザインしてある。さらに随所にある展望台には、神々を思わせるオブジェやモニュメントが置かれている。
  平家平展望台モニュメント
平家平展望台モニュメント
「天に舞い上がるオロチ」


写真そうした中を走っていると、巨大なオロチに飲み込まれ、神話の世界へタイムトリップしていくようである。
開通年には、予想を20万人も上回る約50万人が横田町を訪れた。中国縦貫自動車道東城インターからのアクセス機能に加え、ループ橋の眺望の良さが観光客を呼んだのだ。
町に住むお年寄りが、「なんと、横田の道が渋滞になっている」とびっくりしたという。
商業販売額は開通前の1.7倍に、また、町農業公社が直営する横田和牛のレストラン「PEONY(ピオニー)」などの既存施設も脚光を浴び、中には、入場者が約2.4倍になった観光施設も出てきた。町としても、周辺の施設整備を急ぎ、昨年オープンした「道の駅」に続き7月には「農林漁業体験実習館」や「新郷土料理レストラン」など、農村と都市との交流が図れる施設をオープンさせる。
初めは、観光客に対して受け身であった町民が、想像以上の経済効果に刺激を受け、今では、通り過ぎる観光客をどうにか町へ引き入れたいと思い始めたという。横田町企画振興課の尾方さんは、
「私たち自身が、もっと町に誇りをもち、今以上に町の資源を磨き上げることができれば、達成できる願いだと思います。小さな工夫の積み重ねが、点在する施設を線で結ぶ力になると信じています」と、力強く語る。
出雲神話の「オロチ」が、「奥出雲おろちループ」にその身を変えて現代によみがえった。そして、神代の昔と同じように町を揺すぶり、町民をやる気にさせている。

写真   横田町企画振興課 尾方豊さん
横田町企画振興課 尾方豊さん

ループ展望台オブジェ
ループ展望台オブジェ
「神々たちの世界」

地図 ◆道の駅 奥出雲おろちループ
 Tel.0854-52-2640

〒699-18 仁多郡横田町大字八川2500-294
※松江市から国道314号を車で2時間20分。
※中国縦貫自動車道東城I.Cより国道314号経由で20分。

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