対談 島根を語る  
すみた  のぶよし
澄田 信義
(島根県知事)

島根県出雲市出身。東京大学法学部卒。和歌山県警察本部長、日本国有鉄道常務理事を経て、昭和62年より現職。
澄田 信義
おおやま      よ
大山のぶ代
(声優)

東京生まれ。高校在学中に俳優座養成所入学。「この瞳」(NHKテレビ)でデビュー。以後「名犬ラッシー」「江戸を斬る」「ドラえもん」「おもいッきりテレビ」「全国こども電話相談室」などラジオ・テレビに幅広く活躍。飾り気なく、面白おかしく語りかけ親しまれている。料理の腕前にも定評があり著書多数。また水の研究家としても有名。「大山のぶ代の水なんだ?!」(グラフ社刊)も好評。
大山のぶ代


やすらぎと活力をもたらす美しい景観
知事 大山さんにはたびたび島根県においでいただいて、いろいろな行事に参加していただき感謝しております。
大山 初めてお伺いしたのが昭和44年です。飛行機からわくわくしながら下を見ていたら、斐伊川の川面がうろこのように光って見えたんです。これが八岐大蛇(やまたのおろち)だって思えて、でもこれを昔の人はどこから見たのだろうと辺りを見回したのですけど。
知事 特別高い山はありませんね。簸川平野では、北山の一番高い山が鼻高山(はなたかせん)といいます。その山に登りますと南の方に中国山地、大山や三瓶山、右手には大社、稲佐の浜、これは国譲りの浜ですね。そして薗の長浜、これは国引きの浜ですね。さらに左手に宍道湖が見えます。振り返ると日本海です。
大山 本当に全部見えるわけですか。
知事 500メートル級の山ですが、ちゃんと見えます。
大山 高すぎる山がないというのは目に和らかいのです。それと夕日が美しい宍道湖があって。私も夕日が有名な所はいろいろ見ましたけれども、あの滑らかな嫁ケ島、あそこの夕日は日本一だと思ったんですよ。マレー湾とかハワイとかの外国の夕日を含めてもやっぱりほかにはないでしょう。
知事 そうですね。まさに宍道湖の夕日というのは島根の持つ宝なのです。この自然が織りなした財産を生かして、宍道湖畔に県立美術館を建設しようと思っています。
大山 その美術館が出来上がると、宍道湖の夕日がそこからも見えるわけですか。
知事 はい。風景にも溶け込み、いかにも島根らしい、訪れた人に安らぎと活力をもたらすような美術館にしようと思っています。
大山 それはいいですね。ぜひ素晴らしいものをつくってください。

そこは神様とともに暮らす人々の里
大山 何度か島根に来て出雲の方といろいろお話しするうちに、この地方の人はまだ神様と同居していると感じたんですよ。そこら辺に神様がいらっしゃるみたいに「神さんが、神さんが」とおっしゃってね。神様と一緒に生きてる人たちなんだと感じて、また一層好きになったんです。
知事 出雲地方の10月(旧暦)は全国の神様がお集まりになる神在月(かみありづき)なのです。
大山 ええ。そして神様がお発ちになる日は、朝から町内が集まっておもちをつくそうですね。それは神様の旅の食糧つまりお弁当なんです。ついたおもちを雨戸にぺタッと貼り付けて、その晩は子供たちも、神様たちがご無事にお帰りになるようにと言って、静かに早く寝るんですって。
知事 夜中にすこい風が吹きますよ。
大山 その風に乗ってお帰りになるんですね。朝起きてみると雨戸のおもちが、熊手みたいなもので引っ掻いたように取れてなくなっている。ああ、神様がお帰りになったって。でも、居残りの神様がいると聞いて、どうしてって言ったら、神様だってお酒に酔っ払って二日酔いで起きられなかったり、つい土地の女性と懇ろになってズルズルと居続けることもあるんだと、教えてもらったのです。
知事 いかにも人間的でしょう。まさにそういった昔の神話の地名も残っている。出雲大社には神様がお泊りになるアパートがあります。
大山 なんて素敵なんでしょう。ゆったりと聞ける物語があり、その物語にまつわる場所が残っていて、そこに住む人が、今でも同じように神様とお付き合いしている。私は「ドラえもん」という子供向けの役をやっていますが、ドラえもんというのはタイムマシンで未来でも過去でもどこへでも行けるのです。
知事 子供の夢をかなえてくれますからね。
大山 神話の時代にも行くのです。私は声で出演しているだけですが、神話の世界が本当にあったんだと思える時があるんですよね。出雲に伺うたびに、やっぱりあったと感激します。心の中に思い浮かべた風景に接すると、何となく安らぐというか、気持ちが和むのです。長い人生、一生懸命に働く時期も負けまいと努力する時期もあるし、もうこれだけ働いたのだからゆっくりと、和やかに時を過ごしたいと思う時期もありますよね。島根はそういう和やかに時を過ごす場所として最高だなと感じたんです。
知事 そう思いますね。

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