2017(H29)年 年報
1.2017(平成29)年感染症発生状況の解析と評価
1)全数把握疾患の発生状況:表1〜3
(1)一類感染症
 全国でも報告がなかった。
(2)二類感染症
 二類感染症は全国でも報告があったのは結核のみであり、全国で23,447名、島根県で117名の報告があった。結核の報告数は全数把握対象疾患のうち最多である。
(3)三類感染症
 全国では、コレラ7名、細菌性赤痢141名、腸管出血性大腸菌感染症3,904名、腸チフス37名及びパラチフス14名の報告があった。島根県では、腸管出血性大腸菌感染症13名の報告があり、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスの報告はなかった。
 全国の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、4,000名前後で推移している。2011年に発生したユッケを原因とする腸管出血性大腸菌の集団食中毒による死亡事例により、生食用の牛肉の取扱い基準が定められたほか、牛レバーの生食が禁止された。この規制により生肉由来のO157の発生件数は減少しているとみられているが、腸管出血性大腸菌感染症の全体的な患者数の減少は見られていない。
 島根県の13名の報告は、2016(平成28)年に次ぐ過去最低レベルの数である。例年発生数の多くなる8月と9月に11件(85%)が発生していた。
 血清型別では、26VT1が半数を占めた。O28VT1症例はすべて施設内での発生であった。残りの6例(O111とO157)については生肉、生レバー等の喫食が疑われる例は無く、感染源・感染経路に関しては特定できていない。
血清型毒素型1月2月3月4月5月 6月7月8月9月10月11月 12月
O26VT1         7(4)   7(4)
O111:H21VT1       1     1
O111:H-VT1  2          2
O157:H7VT2       1     1
VT1VT2       2(1)     2(1)
合計  2    4(1)7(4)    13(5)
( )内は、無症状病原体保有者の再掲です。

(4)四類感染症
 四類感染症は、全国ではレジオネラ症(1,731件)、つつが虫病(448件)、日本紅斑熱(337件)、E型肝炎(305件)、A型肝炎(285件)、デング熱(245件)、重症熱性血小板減少症(SFTS)(90件)の報告数が多かった。
 ダニ媒介感染症には地域差が見られ、SFTSは九州、中国・四国地方に多く、日本紅斑熱は西日本全域、つつが虫病は東北地方も含んで発生している。
 経口感染するウイルス性肝炎であるE型肝炎、A型肝炎は近年増加傾向が続いている。また、蚊媒介感染症であるデング熱、マラリア(61件)、ジカウイルス感染症(5件)は国内感染の発生報告は無く、輸入症例(日本国外で感染し、日本入国(帰国)後に発病・診断され届け出られた)によるものだった。
 島根県での4類感染症の発生状況は、日本紅斑熱10件、SFTS6件、つつが虫病5件、レジオネラ症4件、E型肝炎1件、A型肝炎1件、デング熱1件の報告があった。ダニ媒介感染症の報告数が多く、圏域も広がりを見せていることから、島根県では野山に入る際のダニ咬傷の予防などの啓発、医療機関への周知などの対策をおこなっている。
(5)五類感染症
 五類感染症では、全国では梅毒の報告数が5,820件あり、2016年の4,518件に比べ約3割増加した。性的接触による感染が多い後天性免疫不全症候群(1,391件)、アメーバ赤痢(1,089件)は微減であり、これらとは異なる感染リスク、感染経路で拡大していることが示唆される。
 また、2017年は2月から4月にかけて麻しんの流行があり、年間では189件の報告があった。また、風しんも91件報告されている。
 島根県での5類感染症の発生状況では、4月から5月にかけて麻しん(2件)の発生が2009年9月以来8年ぶりにあった。感染性のある時期に公共交通機関を利用して移動していたため、当該交通機関の利用者等多数の接触者に対して健康観察をおこなった。結果として接触者から1名のみの発病にとどまり、感染拡大は生じなかった。
 その他の5類感染症では、梅毒5件、後天性免疫不全症候群1件、アメーバ赤痢4件、侵襲性肺炎球菌感染症43件、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症19件等の感染症が報告された。
(6)動物の感染症
 島根県では報告がなかったが、全国では細菌性赤痢のサルが3件、結核のサルが27件報告された。