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【高次脳機能障害診断基準ガイドライン】について

 ○主要症状の解説(記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害※下記参照

 ○高次脳機能障害とICD-10※下記参照

 ○国際疾病分類第10※下記参照

 ○高次脳機能障害診断基準ガイドライン(PDFファイル)

主要症状の解説

1.記憶障害

 前向性および逆向性の健忘が認められる。全般的な知的機能の低下および注意障害を示さない場合は典型的な健忘症候群である。

(1)前向健忘

 いわゆる受傷後の学習障害である。受傷ないし原因疾患発症後では新しい情報やエピソードを覚えることができなくなり、健忘の開始以後に起こった出来事の記憶は保持されない。参考となる検査法は、ウェクスラー記憶検査、対語記銘課題(三宅式など)、単語リスト学習課題(Rey聴覚的言語学習テストなど)、視覚学習課題(Rey-Osterrieth複雑図形検査、ベントン視覚記銘検査など)。

(2)逆向健忘

 受傷あるいは発症以前の記憶の喪失、特にエピソードや体験に関する記憶が強く障がいされる。自伝的記憶に関する情報の再生によって評価するが、作話傾向のため関係者への確認を行ったり、遅延間隔を置いて再度この課題を行い、1回目と2回目の回答が同一であれば正当と見なすことによって、患者の反応の妥当性を確認する。

 

逆向健忘の程度

軽度:最近の記憶や複雑な記憶でも部分的に覚えている。

意味的関連のない項目を結びつけるなど難度の高い検査で障がいを示す。

中度:古い記憶や体験的に習ったことなどは保たれている。

最近の新しい記憶、複雑な事柄の記憶は失われている。

重度:前向健忘と逆行健忘を含む全健忘、ほとんどすべての記憶の障がいである。

 

 その他、作話や失見当識が見られる。作話は、実際に体験しなかったことが誤って追想される現象である。その内容も変動することが多い。よく用いられる当惑作話とは、その時その時の会話の中で一時的な記憶の欠損やそれへの当惑を埋めるような形で出現する作話で、多くは外的な刺激により出現し、その内容は過去の実際の記憶断片やそれを修復したり何らかの形で利用しているものを指している。検者の質問によって誘発され、捏造された出来事をその内容とする。

2、注意障害

(1)全般的注意障害

集中困難・注意散漫

 ある刺激に焦点を当てることが困難となり、ほかの刺激に注意を奪われやすい。参考となる評価法としては末梢・検出課題、ストループテスト、心的統制課題が挙げられる。

 

注意の持続・維持困難

 より軽度な注意障害では長時間注意を持続させることが困難になる。時間の経過とともに課題の成績が低下する。課題を行わせると最初はできても15分と集中力が持たない。参考となる検査法としてはCPT(ContinuousPerformanceTest)、末梢課題が用いられる。

(2)半側空間無視

 脳損傷の反対側の空間において刺激を見落とすことをはじめとした半側無視行動が見られる。同名半盲と混同しないようにする。右半球損傷(特に頭頂葉損傷)で左側の無視がしばしば認められる。参考となる評価法としては線分2等分、線分末梢、絵の模写などが行われる。なお左同名半盲では両眼の一側視野が見えず、眼球を動かさなければ片側にあるものを見ることができない。同名半盲のみの場合は、視線を見えない側に向けることによって片側を見ることができ、半側無視を起こさない。

 

半側空間無視の程度

軽度:検査上は一貫した無視を示さず、日常生活動作で、あるいは短時間露出で無視が認められる。

なお、両側同時刺激を行うと病巣反対側を見落とす、すなわち一側消去現象(extinction)を示す。

中等度:常に無視が生じるが、注意を促すことで無視側を見ることができる。

重度:身体が病巣側に向き、注意を促しても無視側を見ることができない。

 

3、遂行機能障害

(1)目的に適った行動計画の障がい

 行動の目的・計画の障がいである。行動の目的・計画の障がいのために結果は成り行き任せか、刺激への自動的で、保続的な反応による衝動的な行動となる。ゴールを設定する前に行動を開始してしまう。明確なゴールを設定できないために行動を開始することが困難になり、それが動機づけの欠如や発動性の低下とも表現される行動につながることもある。実行する能力は有しているために、段階的な方法で指示されれば活動を続けることができる。

(2)目的に適った行動の実行障害

 自分の行動をモニターして行動を制御することの障がいである。活動を管理する基本方針を作成し、注意を持続させて自己と環境を客観的に眺める過程の障がいにより、選択肢を分析しないために即時的に行動して、失敗してもしばしば同様な選択を行ってしまう。環境と適切に関わるためには、自分の行動を自己修正する必要がある。この能力が障がいされることにより社会的に不適切な行動に陥る。評価法としては、BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)等がある。

4、社会的行動障害

 (1)意欲・発動性の低下:自発的な活動が乏しく、運動障害を原因としていないが、一日中ベッドから離れないな

 どの無駄な生活を送る。

 

 (2)情動コントロールの障がい:最初のいらいらした気分が徐々に過剰な感情的な反応や攻撃的行動にエスカレー

 トし、一度始まると患者はこの行動をコントロールすることができない。自己の障がいを認めず訓練を頑固に

 拒否する。突然興奮して大声で怒鳴り散らす。看護者に対して暴力や性的行為などの反社会的行為が見られ

 る。

 

 (3)対人関係の障がい:社会的スキルは認知能力と言語能力の下位機能と考えることができる。高次脳機能障が者

 における社会的スキルの低下には急な話題転換、過度に親密で脱抑制的な発言および接近行動、相手の発言の

 復唱、文字面に従った思考、皮肉・風刺・抽象的な指示対象の認知が困難、さまざまな話題を生み出すことの

 困難などが含まれる。面接により社会的交流の頻度、質、成果について評価する。

 

 (4)依存的行動:脳損傷後に人格機能が低下し、退行を示す。この場合には発動性の低下を同時にしていることが

 多い。これらの結果として依存的な生活を送る。

 

 (5)固執:遂行機能障害の結果として生活上のあらゆる問題を解決していく上で、手順が確立していて、習慣通り

 に行動すればうまく済ますことができるが、新たな問題には対応できない。そのような際に高次脳機能障がい

 者では認知ないし行動の転換の障がいが生じ、従前の行動が再び出現し(保続)、固着する。

【高次脳機能障害とICD-10】

  • 1、F04、F06、F07に含まれる疾病を原因疾患にもつ者が高次脳機能障害診断基準の対象となる。

  • 2、この3項目に含まれる疾病をもつ者すべてが支援対象となるわけではないが、他の項目に含まれる疾病は除外される。例:アルツハイマー病(F00)、パーキンソン病(F02)

  • 3、原因疾患が外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などであり、記憶障害が主体となる病態を呈する症例はF04に分類され、対象となる。

  • 4、原因疾患が外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などであり、健忘が主体でない病態を呈する症例はF06に分類され、対象となる。注意障害、遂行機能障害だけの症例はF06に分類される。

  • 5、心的外傷後ストレス障害(PTSD)はF43に該当し除外する。

  • 6、外傷性全生活史健忘に代表される機能性健忘はF40に該当し、除外する。

国際疾病分類第10版

 高次脳機能障害診断基準の対象

ICD-10国際疾病分類第10版(1992)

 高次脳機能障害診断基準の対象となるもの

 F04器質性健忘症候群、アルコールその他の精神作用物質によらないもの

 F06脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害

 F07脳の疾患、損傷及び機能不全による人格及び行動の障害

 高次脳機能障害診断基準から除外されるもの

 F40恐怖症性不安障害

 F43重度ストレスへの反応及び適応障害

 


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障がい福祉課

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