シマネスク55号

「私と島根」

  • 夏の高校野球と斐伊川の夕景− 藤井彩子
 
藤井彩子[ふじいあやこ]
 NHK大阪放送局アナウンサー。東京生まれ、青山学院大学卒。平成5年NHK入局。初任地、松江局。大阪局へ異動後、夏の全国高校野球で、NHKの女性アナウンサーとして初の実況放送を担当。その後、東京アナウンス室へ。「ニュース10」のスポーツコーナーなどを担当。平成16年から再び大阪局勤務。「おしゃれ工房」などの全国放送をはじめ、近畿地方向けの朝のニュース番組「ウィークエンド関西」を担当。
藤井彩子さん
 島根県との初めての出会いは、大学4年の終わり。就職も決まり、卒論も提出し、最後の学生生活を堪能しようと日本各地をぶらぶら旅していたときのことです。山口県の小郡からSLやまぐち号に乗って、着いたところが、津和野。島根県の西の端でした。歴史や文学の薫りを感じさせる町並み。自転車を借りて走ると、澄んだ空気がとても心地いい、素敵な町でした。しかし、津和野にいる間はそこが山口県だとばかり思い込んでいて、島根県だと気づいたのは、お土産に買った菓子折の住所を見たときでした。だって!「やまぐち号」に乗って行ったんですよ!!
 東西の長さと、ちょっぴり自己PRの下手なところ、それが「島根県」の第一印象でした。
 それからわずか3カ月後に島根県民になろうとは!思ってもみませんでした。平成5年4月、NHK松江放送局に、同局初の女性アナウンサーとして着任したのです。
 4年半の島根暮らしでの思い出はたくさんあります。アナウンサーとしてはもとより、社会人としてのスタートであり、一人暮らしも初めて。経験したことすべてが、忘れられない思い出になっています。そしてそれは、島根の美しい景色と一体になっているのです。
 なかでも、私にとって一番の思い出の景色は、斐伊川の河川敷の夕景です。当時、松江放送局では、夏の高校野球島根大会を、全試合実況生中継していました。舞台は「島根の甲子園!」出雲市にある県立浜山球場です。そのため、毎年夏は、松江から片道1時間半かけて、浜山通いの日々でした。松江放送局には当時アナウンサーが全部で6人。全員が高校野球に関わるわけにはいきませんから、球場に来られるのは多くて3人。試合は通常1日4試合。3人が交代で実況とリポーターとディレクターを担当。当然休憩時間は、なし。しかも1人は2試合実況!それが延長戦になろうものなら・・・。丸一日、汗だくになりながら放送し続けました。今思うと、放送し続ける体力、声の持久力はあの時培われたような気がします。
 へとへとになっての松江への帰り道。斐伊川の河川敷に下りて、束の間の休息。局に戻れば、また、怒涛の実況資料作りが待っています。
 川面を渡る涼やかな風。たなびく雲を真っ赤に染める太陽。それを映しながら、地を這う大蛇のごとく流れる斐伊川のゆったりした流れ。時間が止まっているような、そんな錯覚に陥りました。ほんとうにきれいでした。寝そべって食べたアイスキャンディーの味とともに、忘れられない思い出です。
 毎年暑い季節になると、熱かった島根の夏を思い出します。そして、その思い出はいつも、斐伊川の夕景とともにあるのです。
 
『古事記』や『日本書紀』など神話や伝説にも数多く登場する斐伊川(斐川町)
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