私と島根

服部克久
服部克久
Katsuhisa Hattori

服部克久(はっとりかつひさ)
作曲家、編曲家。
東京都出身、パリ音楽院修了。6歳でピアノを始め、成蹊高校を卒業後、パリ音楽院に留学。1958年に帰国し、日本テレビの「ハニー・タイム」で作・編曲家としてデビュー。以来、バックグラウンド・ミュージックや編曲を中心に数多くの曲を手がけ、作編曲は3万曲以上にのぼる。代表作は「日本の四季」、「自由の大地」、「ル・ローヌ」、「音楽畑1〜15」など。’71年、第13回日本レコード大賞編曲賞受賞。日本作編曲家協会会長、東京音楽大学客員教授。

  川本町野外音楽堂「スペランツァ」
 川本町野外音楽堂「スペランツァ」

ロマンの響き、島根
島根と言う言葉には限りないロマンの響きが有る。昔から考古学に興味が有ったので、出雲大社を中心とした幻の出雲王朝などは随分いろいろな本も読んだし、いまだに興味は尽きない。
とは言え、実際に島根を訪れた回数は少ない。その少ない島根体験の中で、松江は何度か訪れた町の一つだ。と言っても、観光旅行ではなくコンサートかテレビ撮りの慌ただしい旅行で、リハーサルの合間に、松江城に登ったり宍道湖のほとりを散策したり、出雲蕎麦を食べたりという本当の腰掛け旅行で、一度ゆっくり訪れたいと思っている。
松江のテレビ撮りが終わって、どうしてもその晩中に広島へ入らなくてはいけなくなって、夜中にタクシーで走る羽目になった。覚悟を決めて、空気枕やら飲み物なんかを買い込んで、タクシーに乗り込んだ。大分走ってから運転手さんに起こされた。どこかの海岸沿いで、真昼のような明るさなのにビックリ。烏賊釣り船のライトだと聞かされて、又々ビックリ。人工衛星からもこの明かりは写真にハッキリ写るというのも実感として良く分かる。しばらく車をとめてボヤーッと見とれていた、誠に幻想的なシーンで今でもはっきり脳裏に焼き付いている。その時の印象があまりにも強烈だったので、後にその印象を「漁火」という曲にして音楽畑アルバムに入れた。だから「漁火」という曲は山陰から生まれた曲と言っていい。
それから大分たった今年、川本町で音楽祭の為に町のイメージソングを作らないかと言う、ご依頼が有った。早速地元にロケハンに伺う。江の川沿いの町から集まったみなさんのレクチャーを受けて制作に取り掛かる事となったのだが、出来上がった荒木とよひさ氏の作詞を見てビックリ、なんとタイトルが、「I am 田舎んぼ」。
大丈夫なんだろうか、本当にこんなタイトルでいいんだろうかと心配したんだけど、皆さん気にいっているという事で当日は無事にご披露することが出来、又大変気にいって頂いたみたいで、安心した。
まことに島根県人らしい大らかさに感心した次第だが、本当は音楽祭の帰りに少し県内を回りたかった。つい最近発掘された沢山の銅鐸も見たかったし、石見神楽なんかも行きたかったのだが、今回も又々見送り、次回は絶対に時間を取るぞーっと、心に堅く誓っている今日このごろである。


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