2019(R1)年 年報
1.2019(令和1)年感染症発生状況の解析と評価
1)全数把握疾患の発生状況:表1〜3
(1)一類感染症
 全国でも報告がなかった。
(2)二類感染症
 二類感染症は全国でも報告があったのは結核のみであり、全国で21,672件、島根県で79件の報告があった。結核の報告数は全数把握対象疾患のうち最多である。
(3)三類感染症
 全国では、コレラ5件、細菌性赤痢140件、腸管出血性大腸菌感染症3,744件、腸チフス37件及びパラチフス21件の報告があった。島根県では、腸管出血性大腸菌感染症8件の報告があった。
 全国の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、4,000名前後で推移している。2011年に発生したユッケを原因とする腸管出血性大腸菌の集団食中毒による死亡事例により、生食用の牛肉の規格基準が定められたほか、 牛レバーの生食が禁止された。この規制により生肉由来のO157の発生件数は減少しているとみられているが、腸管出血性大腸菌感染症の全体的な患者数の減少は見られていない。
 島根県では、2019年に8件の腸管出血性大腸菌感染症の報告があった。2015年の集団感染による多発以降は、20件以下となっていたが、2019年は過去最低の報告数となった。 血清型別ではO157が多いが、各血清型が散発的に発生しており、集積は見られない。
血清型毒素型1月2月3月4月5月 6月7月8月9月10月11月 12月
O26VT1    1       1(1)2(1)
O121VT2     1       1
O121:H19VT2    1        1
O145:H28VT2   1         1
O157:H7VT21            1
VT1VT2        1    1
O157VT(型不明)    1        1
合計1  131  1   1(1)8(1)
( )内は、無症状病原体保有者の再掲です。
(4)四類感染症
 四類感染症は、全国ではレジオネラ症(2,316件)、E型肝炎(493件)、デング熱(461件)、A型肝炎(425件)、つつが虫病(404件)、日本紅斑熱(318件)、重症熱性血小板減少症(SFTS)(101件)の報告数が多かった。
 ダニ媒介感染症には地域差が見られ、SFTSは九州、中国・四国地方に多く、日本紅斑熱は西日本全域、つつが虫病は東北地方も含んで発生している。
 島根県での4類感染症の発生状況は、日本紅斑熱16件、SFTS8件、レジオネラ症8件、つつが虫病3件、A型肝炎2件、デング熱1件、日本脳炎1件、ブルセラ症1件、マラリア1件の報告があった。
(5)五類感染症
 百日咳は16,845件の報告があり、結核に次ぐ報告数となった。またAFPも78件の報告があった。
 全国では梅毒の報告数が6,642件あり、報告数の増加が続いている。一方で性的接触による感染が多い後天性免疫不全症候群(1,231件)、アメーバ赤痢(853件)はやや減少している。
 麻しんは2018年春に沖縄県で麻しんの流行があり流行は夏までに終息したが、2018年末から中部、近畿地区を中心に流行し、2019年前半にかけ関東地区でも報告が続いた。年間では744件の報告があった。 また、2018年後半型から始まった風しんの流行は2019年いっぱい続き、2019年の報告数は2,298件となり、2012年から2013年にかけての流行に次ぐ規模となった。
 島根県での5類感染症の発生状況では、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症45件がもっとも多く、次いで侵襲性肺炎球菌感染症35件、百日咳が30件、風しんが30件が多く報告された。
(5)動物の感染症
 島根県では報告がなかったが、全国では細菌性赤痢のサルが5件、エキノコッカス症の犬が2件報告された。
島根県感染症情報センター