2018(H30)年 年報
1.2018(平成30)年感染症発生状況の解析と評価
1)全数把握疾患の発生状況:表1〜3
(1)一類感染症
 全国でも報告がなかった。
(2)二類感染症
 二類感染症は全国でも報告があったのは結核のみであり、全国で21,850件、島根県で107件の報告があった。結核の報告数は全数把握対象疾患のうち最多である。
(3)三類感染症
 全国では、コレラ4件、細菌性赤痢268件、腸管出血性大腸菌感染症3,844件、腸チフス35件及びパラチフス23件の報告があった。 島根県では、腸管出血性大腸菌感染症18件の報告があった。
 全国の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、4,000名前後で推移している。2011年に発生したユッケを原因とする腸管出血性大腸菌の集団食中毒による死亡事例により、 生食用の牛肉の規格基準が定められたほか、牛レバーの生食が禁止された。この規制により生肉由来のO157の発生件数は減少しているとみられているが、 腸管出血性大腸菌感染症の全体的な患者数の減少は見られていない。
 島根県では、2018年に18件の腸管出血性大腸菌感染症の報告があった。2014年以降では高校の寮での集団感染事例のあった2015年(83件)に次ぐ件数ではあるが、 3年連続して10件代で推移しており、発生状況としては落ち着いている。血清型別では、全例がO157で、なかでもO157VT2が多かった。 感染源・感染経路では家庭内や接触者への2次感染事例が多かった。
血清型毒素型1月2月3月4月5月 6月7月8月9月10月11月 12月
O157:H7VT2     5(2)   7(4)   12(6)
VT1VT2       1     1
O157VT2            1(1)1(1)
VT1VT2      2(1)   1(1)  3(2)
VT(型不明)            11
合計     5(2)2(1)17(4) 1(1) 2(1)18(9)
( )内は、無症状病原体保有者の再掲です。
(4)四類感染症
 四類感染症は、全国ではレジオネラ症(2,130件)、A型肝炎(925件)、E型肝炎(442件)、つつが虫病(455件)、日本紅斑熱(303件)、デング熱(201件)、重症熱性血小板減少症(SFTS)(77件)の報告数が多かった。
 ダニ媒介感染症には地域差が見られ、SFTSは九州、中国・四国地方に多く、日本紅斑熱は西日本全域、つつが虫病は東北地方も含んで発生している。
 経口感染するウイルス性肝炎であるE型肝炎、A型肝炎は近年増加傾向が続いていて、特にA型肝炎については2017年から報告数が増加している。 また、蚊媒介感染症であるデング熱、マラリア(50件)、ジカウイルス感染症(0件)は国内感染の発生報告は無く、輸入症例(日本国外で感染し、日本入国(帰国)後に発病・診断され届け出られた)によるものだった。
 島根県での4類感染症の発生状況は、日本紅斑熱16件、SFTS3件、つつが虫病3件、レジオネラ症14件、E型肝炎1件、A型肝炎1件、デング熱1件の報告があった。 ダニ媒介感染症はSFTSとつつが虫病がやや少なかったが、日本紅斑熱は例年並みの報告数だった。
(5)五類感染症
 五類感染症では、2018年1月から百日咳が5類定点(小児科)疾患から全数報告へと変更された。また、5月には急性弛緩性麻痺(AFP)が新たな全数報告疾患として追加された。
 百日咳は初年から全国で12,000件ほどの報告があり、結核に次ぐ報告数となった。またAFPも139件の報告があった。
 全国では梅毒の報告数が6,923件あり、報告数の増加が続いている。一方で性的接触による感染が多い後天性免疫不全症候群(1,292件)、アメーバ赤痢(838件)はやや減少している。
 麻しんは春に沖縄県で、年末に中部から近畿に掛けて流行し、年間では282件の報告があった。 また、風しんは春から関東地方を中心に流行し、2012年から13年の流行以来5年ぶりに1,000件を超え、2,900件あまり報告された。
 島根県での5類感染症の発生状況では、全数報告となった百日咳が41件報告された。また、梅毒は14件で過去10年では最多の報告だった。 後天性免疫不全症候群1件、アメーバ赤痢3件、侵襲性肺炎球菌感染症36件、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症22件、破傷風3件、風しん1件等の感染症が報告された。
(5)動物の感染症
 島根県では報告がなかったが、全国では細菌性赤痢のサルが1件、エキノコッカス症の犬が8件、結核のサルが2件報告された。
島根県感染症情報センター