●発生状況
島根県での発生動向調査による集計では、県下性感染症(STD)定点医療機関6定点から報告される淋菌感染症は年間65例〜84例(定点当り12.5〜16.3名)、STDのうち性器クラミジア感染症に次いで多く、ほぼ34%を占めています。好発季節はなく、年間を通してみられています。罹患年齢は20歳を中心に40歳代に分布していますが、他のSTDと同じように若青年層へシフトしているようです。
●病原体
グラム陰性の双球菌である淋菌(
Neisseria gonorrhoeae)が病原体です。栄養型、血清型により多型です。薬剤耐性の獲得が早く、ペニシリン、テトラサイクリン、ニュウキノロン系薬剤に対してプラスミド、染色体性の耐性を獲得しています。
●感染経路
円柱上皮が存在する尿道、子宮頚管、結膜、咽頭、直腸に感染します。 淋菌は乾燥、温度変化に弱く人体外での生存性が低く、食器、衣類などを介する感染はありません。無防備な性行為により感染します。感染した女性の咽頭が感染源となることがあるように、感染部位あるいは分泌物との接触感染によっておこります。
感染による免疫は成立せず、何度でも感染します。
●潜伏期
2〜9日。女性では無症状の症例が多くみられます。
●臨床症状
男性は膿性分泌物、排尿痛を伴う尿道炎、発熱。
女性では子宮頚管炎、帯下を生じます、自覚されないことが多く、未治療による感染源となることが多くあります。また、周産期の産道感染により新生児結膜炎の原因ともなります。
●検査室診断
検体採取後の菌の生存性が低く、分離培養は難しいです。淋菌の核酸増幅あるいは同定法がおこなわれています。
●治療と予防
抗菌薬使用直後に菌量は減少し、検出限界以下になる見せかけの陰性化となることが多く、10日以上の休薬期間をおいた後に再度陰性化の確認をします。
●感染症法での取扱い
発生動向調査の定点把握感染症になっていて、指定届出機関(性感染症定点)は、最寄の保健所に年齢、性別ごとの患者発生数を届け出ることになっています。