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平成22年6月定例県議会知事提案理由説明要旨

 定例議会開会にあたり、提出議案の説明に先立ちまして、県行政の最近の動向についてご説明し、併せて、私の所信の一端を申し述べたいと思います。

 

(最近の経済・雇用情勢)

 まず、最近の日本経済の動向につきましては、中国などアジア向けの輸出の増加やこれまでの経済対策の効果などにより、回復傾向が続いております。

 しかし、世界経済を見ますと、ギリシャの危機が欧州全体の信用不安を引き起こし、そして日本を含め世界全体に悪影響を与えることが懸念されております。

 また、県経済につきましては、生産の回復の動きが続いておりますが、企業の投資や雇用情勢は依然として厳しい状況にあります。

 こうした状況にありますので、今後とも内外の景気動向などをよく注視しながら、適切な政策運営に努めていく考えであります。

 

 今春の新規学卒者の就職につきましては、県内企業に対する新卒者の雇用への助成や人材育成への支援などの効果もあり、例年並みの就職率が確保されました。

 来春の新卒者採用につきましても、県として商工会議所など経済団体や個別企業などに早期求人の要請を行うなど、万全を期していく考えであります。

 

(産業の振興)

 こうした雇用情勢の中で、産業の振興は極めて重要な課題であります。

 企業誘致につきましては、昨今の厳しい経済情勢の中で企業の新規設備投資が抑制されたこともあり、昨年度は、誘致企業の認定は9件、総投資額は130億円程度、新規雇用計画数は150人弱で、最近数年間の中では低い水準にとどまりました。今後、企業誘致に一層の努力をしてまいります。

 そうした中で、ソフト産業につきましては、立地助成措置を拡充したことなどにより、県内立地が増えてきており、この動きをさらに促進するよう努めてまいります。

 また、自動車産業では、電気自動車やハイブリッド車などの新技術への対応が県内企業にも求められており、この度、産業技術センターを中心に「次世代自動車等技術研究会」を立ち上げ、関連企業への支援を行っていくこととしております。

 

(農林水産業の振興)

 農業振興につきましては、今後10年の農政の方針を示す「食料・農業・農村基本計画」が3月末に閣議決定され、食料自給率を50パーセントに引き上げる目標が掲げられました。その実現に向けた政策の柱の一つとして、戸別所得補償制度が位置づけられたところであります。

 県としましては、集落営農組織などの担い手が意欲を持って水田農業に取り組めるよう、今年度実施されるモデル対策を有効に活用していきたいと考えております。

 そして、来年度からの本格実施や、今後検討される畜産・酪農、漁業及び森林管理等における同様の制度の導入にあたっては、地域の実情を十分反映した仕組みとなるよう、農林水産業の基盤整備の推進を含め、国に対して要望してまいります。

 ご承知のとおり、宮崎県で大規模な口蹄疫が発生し、感染の拡大が懸念されております。県としましては、県内の畜産農家に対して消毒剤を配布するなど予防措置を徹底するとともに、新たに相談窓口の設置や緊急融資制度の創設を行ったところであります。

 今後とも、発生動向をよく注視しながら必要な対策を機動的に取ってまいります。

 

(観光の振興)

 次に、観光振興について申し上げます。

 島根の大きな魅力は、日本が国家として成り立つ頃からの歴史的・文化的遺産が現代まで県内各所に息づいていることにあり、これは我が国全体の大きな財産でもあります。

 平成24年には出雲神話が多く記されている古事記が編纂されてから1,300年を迎え、翌25年は出雲大社「平成の大遷宮」があります。

 この絶好の機会に、古事記の世界だけでなく出雲風土記、万葉集などにも登場する古代世界からの歴史的遺産、神楽、文芸など、伝統や文化を県内外に大々的に紹介し、観光誘客を図っていくこととしております。

 本年3月には、官民一体となって「神々の国しまね〜古事記1300年〜」の事業を進めるため、推進協議会を立ち上げました。

 県民の方々からも広く事業の提案をいただきながら、平成25年にかけて展覧会など各種イベント、誘客・広報・宣伝、地域の受け入れ体制整備などの事業を進めてまいります。

 また、神話にゆかりのある奈良県、宮崎県、鳥取県、三重県などとも連携し、首都圏での共同シンポジウムの開催や、神話のストーリーに沿った旅行商品の開発などに取り組んでまいります。

 こうした中で、JRグループの大型観光キャンペーンが平成24年秋に、山陰では6年ぶりに島根・鳥取両県で行われることが決定されました。

 また、5月下旬には、一畑電車の走るのどやかで豊かな世界を、平田出身の錦織監督が映画化した「レイルウェイズ」の全国上映が始まりました。

 さらに、島根・鳥取両県の若手県庁職員が共同して取材・編集を行って、山陰の風情や隠れた魅力などを紹介した雑誌「おかげ」を3月に発行しました。

 以上申し上げましたような様々な取組みが観光振興につながるよう全力を尽くしてまいります。

 

(県内航空路の確保)

 次に、県内航空路の確保について申し上げます。

 高速道路や新幹線などの整備が不十分な島根県において、高速交通ネットワークの要である航空路線の確保は、地域振興のために不可欠でありますが、県内3空港の航空路線は大変厳しい状況にあります。

 このうち全日空の萩・石見空港-大阪便につきましては、運航休止の打診が3月中旬にあって以降、地元益田市とともに運航継続を求めてまいりました。

 しかし、3年連続の大幅赤字を避けたいとする全日空の意向は固く、誠に遺憾でありますが、来年1月4日で運航が休止されることとなりました。

 このため、萩・石見空港-大阪便の早期の再開を求め、地元と協力して緊急に利用率向上対策と、来県される観光客の増加対策を行う必要があります。

 さらに、目下、会社更生法による更生計画を作成中の日本航空につきましても、航空路線の廃止、機材の小型化が検討されていると報じられており、隠岐空港、出雲空港の路線への影響が懸念される状況にあります。

 こうしたことから、萩・石見空港対策に加え、関東方面から隠岐空港への誘客対策、出雲空港の愛称の活用など、航空路線の利用促進を緊急に行うため、総額2億円の補正予算案を今議会に提出致しましたので、宜しくご審議のほどお願い申し上げます。

 

(社会資本の整備)

 次に、社会資本の整備につきましては、国の今年度予算が大幅に削減され、また治水対策のあり方の見直しが行われるなど、県内で行われる事業のいくつかについて、今後の見通しが不透明な状況にあります。

 こうした中、高速道路の整備につきましては、5月8日に島根・鳥取・山口3県の県民など約3千人が参加して「山陰自動車道建設促進総決起大会」が益田市において盛大に開催され、山陰道全線の早期開通に向けた活動促進が決議されました。

 主催された3県の県議会の議長はじめ議員各位のご尽力に深く感謝申し上げます。

 

 また、全国知事会の「地方の社会資本整備プロジェクトチーム」においては、地方の社会資本整備の必要性や事業の進め方などについての提言をとりまとめ、5月6日に、国土交通大臣に提案と要望を行いました。

 私もこのプロジェクトチームに参加し、遅れている地方の社会基盤整備が後回しにならないよう、高速道路ネットワークの未整備箇所、いわゆるミッシング・リンクを早期に解消すること、公共的な役割を持つ地方の航空路線への支援を行うこと、治水対策の見直しに当たっては地方の意見を尊重することなどを強く訴えてまいりました。

 

 さらに、5月13日には、島根県など高速道路ネットワークが繋がっていない9県の知事が共同で国土交通省に政策提言を行いました。

 高速道路は基礎的な社会インフラとして、国全体の公平性の観点から国の責任で早急に事業の進捗を図るべきであり、今後とも全国知事会や同じような状況にある県等と連携しながら、整備の促進を国に働きかけてまいります。

 

(斐伊川・神戸川治水事業等)

 次に、斐伊川・神戸川治水事業について申し上げます。

 上流部の志津見ダム・尾原ダムにつきましては、今年度末の完成を目指して、また、中流部の斐伊川放水路につきましては、平成20年代前半の完成を目指して着実に建設が進められております。

 下流部の大橋川改修につきましては、島根・鳥取両県と流域市町の意見聴取などの手続きを経て、国の斐伊川水系河川整備計画が策定された後、いよいよ今年度から事業に着手されることとなっております。

 これらの治水対策事業が円滑に進められ、流域住民の方々の安全・安心が確保されるよう、引き続き、国や関係市町と連携して取り組んでまいります。

 

 また、中海の護岸整備、水質保全などについて協議する場として、国の関係機関、両県及び地元4市1町の首長が一堂に会する「中海会議」が設けられ、4月22日に第1回目の会合が開催されました。今後、この場を通じて中海圏域発展のための協調が進むよう努めてまいります。

 

 さらに県は、本年3月に、第5期「宍道湖・中海湖沼水質保全計画」を策定したところであり、環境生活部に新たに設置した「宍道湖・中海対策推進室」を中心に、鳥取県や関係機関と連携して両湖沼の水質保全を一層推進してまいります。

 

(医療の確保)

 次に、医療の確保について申し上げます。

 離島や中山間地域、特にこの1、2年は県西部地域における医師不足や、産科・外科など特定の診療科での医師不足が深刻化しております。

 この問題は、医師養成の仕方、研修医制度、診療報酬など、国の医療行政とも深く係わっております。

 このため、県としましては、厚生労働省・文部科学省などに対して、例えば奨学金と連動した地方大学の医学部の入学定員の拡大、さらに、医師が不足する地域での一定期間の勤務を条件とした特別の入学枠の設定など、医師不足や医師偏在の解消に向けた抜本的な対策をとるよう、強く要望してきております。

 こうした国への働きかけを行う一方で、県としましては、昨年度策定した「地域医療再生計画」に基づき、県内で医師として勤務するよう誘導するための奨学金制度を拡充するなど、対策を強化してきております。

 また、即戦力となる医師を地域に招へいするために、新たに赴任する医師への研修資金貸付制度などを創設致しました。また、勤務医の過重労働の軽減を図るため、医療事務作業を補助する職員の雇用に対して助成を行うなど各般の対策を講じてまいります。

 さらに、医師の県内定着を誘導するために、島根大学に寄附講座として地域医療支援学講座を設置し、医師確保に不可欠な大学との連携を強化してきております。

 看護職員につきましても、奨学金制度の拡充により県内就業を促進するほか、研修支援による離職防止・再就職促進対策などを実施し、その確保に努めてまいります。

 さらに、医師を目指す若者を教育の早い段階から県内で育てていくため、高校生に加え、新たに中学生を対象に、病院の見学などをしてもらうことにより、医師の仕事や地域医療について中高校生の関心と理解を深める取組みを行ってまいります。

 

 ドクターヘリにつきましては、救急医療の充実を図るため、平成23年度中の運航開始を目指しており、委託先の運航会社を交え、医療機関、消防、市町村等と具体的な導入準備に近々、入りたいと考えております。

 がん対策につきましては、県内におけるがんの実態をより正確に把握するため、病院等から情報を一元的に集約する地域がん登録事業を実施して、がんの予防や検診の精度を向上させてまいります。

 

 また、7月15日には、第46回献血運動推進全国大会が松江市において開催されます。

 県内外から1,500人程度の方々の参加が見込まれており、この大会を通じ、献血運動の輪が一層広がることを期待しております。

 

(安全安心な生活確保)

 さて、3月末、中国電力島根原子力発電所における保守管理の不備が発覚しました。中国電力の安全確保体制が不十分であったことは誠に遺憾であります。

 原子力発電につきましては、安全確保の体制がしっかりと築かれ、地域住民の方々の信頼を得られることが必須の条件であります。

 県としましては、中国電力に対して安全体制の確立に取り組むことを強く要請するとともに、同発電所の保守管理体制等を確認するため、立入調査を実施致しました。

 また、規制・監督を行う国に対しましては、検査・監督を適切に行うとともに、国自らが状況を県民に分かりやすく説明することなどを要請してきております。

 4月30日には、中国電力において、今回の問題の直接的な原因と再発防止対策を内容とする中間調査報告がまとまったことから、5月23日に県と松江市の共催で説明会を開催し、国及び中国電力から住民の方々に直接説明してもらったところであります。

 今回の問題に関する最終の調査報告では、中国電力の内部体制のあり方を含めた抜本的な再発防止対策が講じられることになっております。

 県としましては、今後とも、県民の皆様に対し適切な情報提供を行うとともに、国の監督や中国電力の対応をよく注視し、再発防止対策が確実に実行されるよう監視してまいります。

 

 次に、治安対策について申し上げます。

 昨年12月に、官民が連携して取り組む総合的な治安対策として「犯罪に強い社会の実現のための島根行動計画」を策定し、この行動計画の実施に取り組んでおります。

 特に子どもや女性の安全・安心に向けた各種施策を推進していく必要があり、通学路や住宅での安全対策など、関係機関やボランティア団体等と連携して、県民総ぐるみの取組みを推進してまいります。

 

(教育の推進)

 次に、教育につきましては、発達障がいの児童・生徒が近年増加傾向にあり、今後の特別支援教育のあり方について検討するための委員会を5月に設置しました。広く県民の皆様のご意見を伺いながら、年度内に方向性を出したいと考えております。

 また、8月には、全国中学校体育大会が中国地方で開催され、県内では、松江市と出雲市が柔道と剣道の会場地となります。

島根県の若者たちが、この全国大会で日頃の練習の成果を発揮して、活躍することを期待しております。

 

(県の施策の点検)

 さて、県では県勢発展のために多くの施策を行っておりますが、県民の方々の様々なご意見などをよくお聞きしながら、各般の施策の点検・見直しを行うことにより、効果的に施策を展開することが必要であります。

 そのため、今般、県の「改革推進会議」の中に、医療・福祉や産業振興など主要な分野ごとに施策の点検を行う部会を新たに設けることと致しました。

 この点検は年内に行い、今後の予算編成等の参考にしたいと考えております。

 

(活力ある島根を目指して)

 さて、昨今、私どもが強い関心を寄せざるを得ないことの一つとして、社会資本整備や地域医療・福祉の分野などにおいて見られる、大都市と地方の格差の問題があります。

 我が国は戦後、大都市への投資を集中的に行い、そこに人や物が集中することで発展してきましたが、今や経済・社会の成熟化などにより、東京など大都市の発展だけで国全体をリードし、日本を豊かにしていける時代ではなくなったと思います。

 大都市の過密社会は、人々にとって決して住みやすく、子育てなどがしやすいところではなくなっております。例えば、大都市での出生率は、地方より相当、低くなっております。

 他方、地方には、豊かな自然・文化・伝統、子育て世代や高齢者にとってもやさしい居住環境、温かい地域社会といった、大都市で失われたものが沢山、残っております。

 私は、こうした豊かな地方へ人口などの分散を進めることが、都市の過密と地方の過疎という、二つの相反する不健全な行き過ぎを改善し、日本全体を真に豊かにするために必要だと考えております。

 そして、そうした地方分散を進めていくためには、遅れている社会インフラの整備や、医療の確保、産業振興などにおいて地方をもう少し大事にする政策が、国レベルでとられることが必須であります。

 島根県を含め、11県の知事による「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」は、このほど、地方分散に向けた政策提言をとりまとめました。今後、さらに関係11県で協力しながら、国などを含め広く国民各層に地方分散の必要性を訴えていきたいと考えております。

 

 以上、私の所信の一端を申し述べましたが、この後、補正予算案を含め提出議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることに致します。何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私からの説明を終了致します。

 


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